思うところ29.「賃貸併用住宅」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ29.「賃貸併用住宅」




    その若者は、20代半ばで「賃貸併用住宅」の利点に気付いた。今から15年も前のことである。永住権を取得して間もない彼が住宅を取得するにあたり、物件価格比100%の融資を受けて賃貸併用住宅を取得するに至ったことは、M銀行の的確なアドバイスがあったことを割り引いても驚きの事実である。果たして20代の頃の私に異国の地において同じことができるだろうか。

    賃貸併用住宅に対する融資審査基準は銀行毎に異なり、一部取り扱いの無い銀行があるものの、1棟の建物の過半を自己居住に供するならば、物件価格比100%のの低利融資が利用可能となるのが一般的である。
    つまり、貸室から月額8.5万円の家賃収入が得られる賃貸併用住宅を価格3,000万円で取得できるとすれば、頭金0円であっても、借入期間35年、借入金利1%(元利均等)にして本人の実質負担額は0円(家賃と返済額が同等)となる。

    彼が見つけたのは、築浅のアパート(共同住宅)だった。A棟・B棟2住戸の連棟式建物で、幸いにも空室のA棟延床面積は建物全体の51%だった。B棟はオーナーチェンジ(貸主の地位を新所有者が承継する売買)だから、即収益も開始できる。自宅を探すにあたり、アパートを購入対象とすることは、初めてを買う20代の若者になかなかできるものではない。だが、彼は賃貸併用住宅の融資の仕組みを理解してそこに辿り着いた。

    彼は、富裕層のご子息であったにも拘わらず、日本語を学ぶために仕事の厳しさにおいては、日本運送業界屈指のS急便に就職していた。(「習う」より「慣れろ」とのことだそうだ。)年収に占める歩合給の比率が高いことは、通常は融資審査上のネックとなるのだが、20代にしては、抜きん出た高収入と手頃な価格帯であったことで100%融資の承認を得た。A棟に住まうこと以外の特別な融資条件は、ただ一つ、登記上の建物種類「共同住宅」を「居宅」に変更登記することだけだった。

    当時日本の不動産市況はデフレから脱却したとまでは言えず不動産価格も安値圏にあった。その上、適用金利も低く、振り返れば不動産の「買い時」であった。その購入時期に関しては、彼の「先見の明」なのか「運の強さ」なのか定かではないが、少なくとも「運」だけで道を切り開いている様には思えない。

    彼は、当社の重要顧客であり、今や国際的に活躍する経営者となったが、私と多くの取引を経て良好な信頼関係にあり、お客様扱いせずに「友人」だと言っても怒らないと思う。そしてこの度、本コラムで取り上げた「賃貸併用住宅」は、当社の仲介により、その「友人」から当社の新たな顧客に所有者と貸主の地位を引き継いで貰うことになった。

    15年前と違うのは、延床比過半のA棟が賃貸中であった為、「賃貸併用住宅」としての売買を成立させるためには、A棟の借主に偶然にも空室となったB棟(延床比49%)への移転をお願いする必要があったことだ。隣人に遺恨があっては、その後の生活が上手くいくはずがない。「相手が迷惑だと感じたら即撤退(商談中止)」の方針を当該顧客と申し合わせていた。幸いにも「友人」から移転費用を負担する相応のバックアップがあったこともあり、A棟借主の快諾を得ることができた。取引には守秘義務があって多くは語れないが、当事者それぞれに細心の配慮が必要な労の多い仲介であった。

    さはさりながら、15年前と同じく、一人の若者がこの「賃貸併用住宅」の利点に自らが気付き、自宅購入と同時に不動産投資に挑戦することに関し、少しでも役に立ったのならば光栄であり仲介冥利に尽きる。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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