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  • 思うところ36.「囲い込み」




    <2018.7.10>
    不動産業界に蔓延(はびこ)る「囲い込み」なるもの、いずれテーマとして触れようと思っていた。そう思っている内にマスコミ報道によって世間の批判に晒されるところとなり、行政指導と流通機構の改善策が功を奏して今は沈静化している。「囲い込み」とは、売主の知らないところで売却を依頼された仲介会社(=物元業者)が手数料の倍増(売主・買主双方からの手数料受領)を目的に、買主側の仲介会社(=客付会社)に売却情報を公開しない(内見希望・商談を受け付けない)行為を指す。

    客付業者が顧客に物件紹介をすべく問合せをしても悪質な物元業者は、「今、買付(=購入申込)が入ってるんでぇ~売り止め(=新規商談を入れない)で~す。」などと白々しい嘘をつく。また、その仕打ちを受けた客付業者も同類の輩(やから)であるならば、己が物元の立場になった途端に同様のことをする。真の被害者は早期契約を期待している売主であり、その情報を欲していた買主である。

    この改革の発端は、「売主の味方」を喧伝する勢力によるところが大きい。自分たちの正当性を主張して優位に立たんが為にマスコミを使ってこの悪質な「囲い込み」が横行している事実を暴いた感がある。思惑がどうであれ、結果としては不動産業界が浄化に自助努力して改善できたのだから、ある意味改革の「功労者」と言って良い。一番効果があったのは、流通機構(レインズ)のシステム変更により、売却依頼主に商談の進捗状況を情報開示するようになったことだ。仲介会社が虚偽の「申込あり」を表示して作為的に門戸を開放しないならば、売主から苦情を受けることになるから「囲い込み」はできない。もっと早くにそうすべきであった。

    不動産業界では、生産性を高める為に業界用語で「両手」取引を重んじてきた過去がある。「両手」とは、売主・買主を直接結び付けることによって双方から手数料を受領する取引だ。だから同業者が売主側、または買主側に存する時は、「片手」と称する。その時の手数料の分配方法は「分かれ」といって互いの依頼主からそれぞれ手数料(成功報酬)を受け取ることになる。(当然に利益は半減する。)

    だが、問題は「両手」取引にする為に欺罔(ぎもう)をもって「囲い込む」ことが悪いのであって、正当な「両手」はむしろ好ましいことだと思う。仲介会社を仲人(なこうど)に喩えるならば、双方の気持ちを忖度(そんたく)して円満に縁結びをすることに何の問題があろう。離婚調停に立つ米国の弁護士のように依頼主の主張を代弁して、唯々相手を打ち負かすような争いをすることは「和を以って貴しと為す」我が国の一般的な不動産取引にはどうも馴染まない。(コラム1.「矛盾」コラム28.「過剰」参照)

    私には、健全な「両手」に努めてきた自負がある。「囲い込む」ことなく「両手」にしてこそ、その取引実績に胸を張れる「誇り」となるのだ。その為に他業者に先駆けて直客で成約できるよう創意工夫し、小さなことでも「両手」になるような努力を重ねてきた。だが、「両手」に拘ることがあっても「囲い込み」を指示したことは無い。「片手」は自分の気持ちの中では、「負け」であったが、早期好条件で成約することは売却依頼主の利益であるから「めでたい」ことだとも思っていた。

    だから、勝ったり、負けたり、である。裏返せば正々堂々の健全な取引の結果である。今も昔も、我欲にも等しい不自然な「全勝」を冷ややかに見ている。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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