思うところ14.「欲」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ14.「欲」




    人類は「欲」というエネルギーによって進化を遂げてきたといっても過言ではない。生きるためには食べねばならない。その「食欲」は、採集のみでは満たされず農耕へ発展していく。成果が不確実な狩猟は、より高い生産性を求めて畜産へ移行する。農耕も畜産もその肉体労働を軽減する為に様々な道具が作り出され、その道具が派生して武器となった。種族を統率する指導者が必要となり、やがて「国」という概念が生まれる。指導者は「権力欲」を原動力として「経国済民」の重責を背負って覇権を争う。また、「性欲」が無ければ子孫を残すことはできないし、「金銭欲」が無ければ経済が活性化しない。「欲」は、人のDNAに刻み込まれた神の領域であろう。

    さて、今回のコラムのテーマを「欲」としたら冒頭の書き出しになってしまった。だが、今回触れるのは「煩悩」の話ではなく、不動産業界における「我欲」としたい。「我欲」とは、「自分さえ良ければ、」という私利私欲のこと。残念ながら不動産に携わる仕事をしていて「我欲」を感じることが少なくない。

    <42条2項道路>
    宅建業者が略して言うところの「2項道路」とは、建築基準法第42条2項に基づく4m未満の道路のことであり、建物を新築する際には、道路の中心線から2mセットバックしなければならない。時間は掛かるがセットバックは建替えの時まで猶予されるわけだから当事者の負担は比較的少なくて済む。細街路の整備方法として、とても良心的かつ合理的だと思う。しかしながら、建物が完成すると元の敷地ラインを譲らず、庭や駐車場としてせり出してくる地権者がどの街にもいる。当然道路はいびつな形状となり街並みは整わない。そればかりか、消防車、救急車、パトカー等の緊急車両の迅速な移動を阻む。これは明らかに法令違反であり「我欲」だ。

    目立てば良しとする看板>
    日本経済の中心地」と称される街。ビルの屋上に蛍光色の下地に赤枠・赤字の巨大な看板(広告塔)がある。どんな経営者なのだろう。証券会社の看板等にしては品格に欠ける。ラーメン屋なら分からぬでもないが目立てば良いというものでもなかろう。海外からの旅行者も多いこの街で恥ずかしく思う。「東京都景観条例」や「地区計画」に抵触しないのだろうか。もっとも、美的感覚には個人差があり、悪いと決めつけてはいけない。だが、私の美的感覚が正常ならば、この看板は目立つことが最優先の「我欲」の塊であり醜悪だ。ヨーローッパ諸国の街並みを見習って景観も街と不動産価値を構成する重要なファクターであることを理解すべきである。

    <駅前商店街の廃屋>
    駅前なのに、何年も廃屋の店舗。相続争いのような複雑な事情ならば諦めがつくが、大金持ちの「無関心」には憤りを覚えることがある。せっかくの商店街の活気も負のオーラを纏ったその廃屋に吸い込まれていくかのようだ。地主に事情を尋ねると「俺の勝手だろう!」の一言。確かに日本国憲法でも私有財産の自由が保障されており正論である。大地主の彼にはどうでも良い資産であり活用することそのものが煩わしいのかもしれない。

    だが、商店街は互いに協力・競争してこそ相乗効果が生まれるものだ。どうか「我欲」を捨て、街の発展のためにも、そこで起業したら成功するかもしれない「意欲」溢れる若者にチャンスを与えて欲しい。もし、リフォームする気すら無いのなら当社に譲って欲しい。その不動産を甦らせ、もう一度世に送り出す自信がある。

    まだまだ書き足りない。本当は「相続争い」のことや「不法投棄」のこと、世に問うてみたい「我欲」は沢山ある。残念ながら紙面の都合で余白が無い。「欲」は尽きないものである。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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