【寄稿№86】 民泊業者に普通賃貸借で建物を貸してはいけない  | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 【寄稿№86】 民泊業者に普通賃貸借で建物を貸してはいけない 



    2025.10.1寄稿>

    寄稿者  K. Hayama                                       

    ある日のこと。中堅デベロッパーの仕入れ担当・石田係長(仮名)のボヤキを聞いた。
    「いやぁ民泊業者には二度と貸さん」

    ことの始まりは、新築マンションを一棟、民泊を手がける会社に貸したことだった。電話一本で現れた営業マン山村(仮名)は、30代の軽快な男。

    「民泊は得意っす!サブリース保証もバッチリっす!相場15千円? うちは16千円保証しますよ!」

    営業トークは居酒屋の呼び込み並み。だが石田は警戒しつつも、上司に相談した。

    すると上司はひと言、
    「お、この会社スミフのビルに入ってるのか。名前も聞いたことあるし、まぁ大丈夫だろ」

    ——そのスミフ安心神話が、後に石田の胃に穴を開けることになる。

    結局「いつでも解約できるなら試してみよう」ということになり、普通借家契約で一棟貸し出し。しかも山村は即答で「6ヶ月前予告で解約もOKっす!」と胸を張った。上司も「念のため借地借家法に縛られないと書いてもらえ」と細かく指示し、契約書は一応整った。

    ——そして1年半後。

    コロナ明けの留学ブームで賃料相場は爆上がり。坪18千〜2万円でも借り手がつく状況になった。

    石田が試しに民泊の査定を取ると、状況は一変。
    民泊バブルに乗り遅れまいと、レッドオーシャンのごとく新規参入業者が雨後の筍のように次々登場
    どの会社も口をそろえて「19千でも、2万円でも保証しますよ!」と景気のいいセリフを並べてきた。

    ところが、肝心の山村に値上げを相談すると返事は冷ややか。
    「上がっても10%の17,600円っすね。それ以上は無理っす」

    報告を受けた上司は即断。
    「よし、解約しろ!」

    解約通知書も渡し、安心していた石田。ところが11月に明け渡し日を確認しようと山村の上司に電話すると、スピーカーの向こうから返ってきたのは予想外の声だった。

    「解約? 初耳ですけど?」

    石田、絶句。どうやら山村、会社に何も伝えていなかったらしい。
    後日、先方の部長と役員がやって来て「解約には応じられません」とドヤ顔で宣告。

    現在、石田は訴訟の真っ只中。山村の会社は「普通借家契約の解約条項? 一次貸しの合意もないし、借地借家法違反だから最初から無効っすよ」と開き直り。「山村って、会社の代表じゃないし、まぁ社員が勝手に言ったことだし」

    石田の嘆きは続く。
    「スミフのビルに入ってるから大丈夫だと思ったんですがね

    ——教訓。
    民泊業者と契約するなら定期借家契約。それでも「38条書面がないから無効!」などと言い出しかねない。

    彼らと付き合うときは、細心の注意と鉄壁の契約を。

    「大手ビルに入ってる=安心」なんて神話は、もはや都市伝説。
    スーツ姿で爽やかに見えても、契約書の中身までクリーンとは限らないのだ。


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