【寄稿№72】 訳アリ物件についてあれこれ | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 【寄稿№72】 訳アリ物件についてあれこれ




    <2024.9.13寄稿> 
    寄稿者 ふんふん武丸

    普段はあまりテレビを見ない私だが、先日、面白い番組を見つけた。お笑いタレントが訳アリとされる物件を事前情報なく内見していき、どんな瑕疵がひそんでいるのか、推理して当てていくというものだった。内見には事故物件サイトでおなじみの大島てる氏も同行し、瑕疵を見抜くポイントなどを教えてくれる。まずは、訳アリと言われるものには4種類あるという話から入っていった。

    1つ目は「心理的瑕疵」、いわゆる事故物件と呼ばれるもので、殺人や自殺といった事件現場になったような物件をさす。2つ目は「物理的瑕疵」、これは建物なら雨漏り・シロアリ・耐震強度不足など、土地なら地盤沈下・土壌汚染などといった、物理的になんらかの欠陥があるものをさす。3つ目は「法的瑕疵」、これは例えば昔に建てられた家が現在の法律では接道義務違反にあたって再建築ができないなど、法令上の制限によって自由に利活用できないような物件をさす。4つ目は「環境的瑕疵」、これは物件そのものに瑕疵はなくても、騒音、悪臭、振動といった周辺環境に問題があるものをさす。

     4つの瑕疵について勉強になったところで内見に入っていき、実際の瑕疵の状況を映像で確認することができて、視聴者としてもおおいにためになる内容だったし、不動産素人であるお笑いタレントがなんでも殺人事件に結び付けてしまう様子も見ていて面白かった。

     最近では、訳アリ物件を専門で取り扱う不動産会社というのもよく見かけるようになったなと思う。「成仏不○産」というド直球でわかりやすい社名のものまである。訳アリ物件を買い取ってどのように収益に結び付けるのかは気になるところだが、住居から店舗に用途を変えるなど、いろいろノウハウがあるようだ。また、例えば事故物件であれば特殊清掃や遺品整理に加えてお祓いといったことまで一括で引き受けるサービスもあるらしい。

     ところでかなり昔の話になるが、私が不動産会社の賃貸管理部門で働いていた頃、管理下にあった一戸建ての借家で事件がおきてしまった。借主は高齢の一人暮らしの男性で、庭先で自ら命を絶ってしまったのだ。一報がはいってきたときも背筋に衝撃が走ったが、私は事故物件を扱うのが初めてだったこともあり、その後の現地確認やオーナーとの話し合い、「告知事項あり」というワードを初めて使った募集広告の作成など、対応のひとつひとつにいつも以上に緊張感を覚えたものだった。

     そういえば当時、このような告知に関しては、賃貸のケースだと事故後1回目の入居者にのみ行えばよいといった商慣習があった。そのため、良くない例だと身内の人間などでとりあえず賃貸借契約を1回結んで告知義務を終わらせてしまうといったこともあったようだ。ルールがあいまいでトラブルも多いこの告知事項だが、2021年の秋ごろになってやっと国土交通省が告知に関するガイドラインをはじめて公表したという。

    それによると、告知が必要なのは賃貸のケースだと事故発生から3年間で、売買のケースだと年数の定めがない(つまりずっと)ということだ。また、死亡が発生したらすべからく事故物件になると思っている人も多いと思うが、基本的には自然死にあたらないような殺人や自死といったケースのもの、あるいは自然死でも発見が遅れ特殊清掃が必要となったものが告知対象となるらしい。ただし、死因や発生後の期間がどうであれ、事案について尋ねられた場合や社会的あるいは心理的な影響が大きいなど、把握しておいたほうが良さそうな事情がある場合は告知の必要がある、とのことなので、実際のところ人によって判断が分かれることもありそうだ。たとえば、入居していた人が心霊現象に悩まされて退居したといったケースでは、証明のしようがないので告知不要という見方もあれば、心理的瑕疵にあたるという見方もある。気になる人は自分から聞いたほうが良さそうだ。

    さて私が出会った一戸建ての事故物件がその後どうなったかというと、募集開始から時を待たずして、あっさり入居者が見つかった。友人同士2人でシェアして住む家を探しているという大学生が、いくつかの不動産会社で紹介を断られ、「オバケが出る物件でもなんでもいいです!」と駆け込んできて話がまとまったのだ。『大学生の友人同士』という点が敬遠されやすいうえ、美術系の学部で画材道具を持ち込んでアトリエとしても使いたいから部屋は3つ以上ほしいが家賃は多く払えないなど、条件も厳しかったので、一般の物件で紹介できるものがなかったのだ。
    彼らは、卒業まで元気に毎月家賃を払いにきてくれた。気にしない人は気にしない、ということで、なかなか良いマッチングだったかなと思う。ビビリで気にしいの私としては、『気にしないキャラ』という強みは本当にうらやましい限りだ。


     


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