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  • 思うところ22.「限界」




    <2018.3.13記>
    「限界」といっても、私の肉体的、精神的限界の話ではない。
    これから、日本社会が直面する問題であろう「限界マンション」の話だ。

    昭和40年頃から積みあがった日本の分譲マンション供給戸数は累計600万戸を超えた。その内で旧耐震での供給戸数は約104万戸。旧耐震であろうが新耐震であろうが「永久」に傷まない物は無く、いずれ「リノベーション」の時代から「スクラップ&ビルド(=建替)」の時代を迎えることになろう。

    現存する世界最古の木造建築物といわれる7世紀創建の法隆寺は、日本の高度な木造建築技術の代表格であり、良質な建築物は維持管理が適正であれば想像以上に長持ちすることを実証している。中世ヨーロッパの建造物が、巧みに手直しされて現代に受け継がれ、当たり前のように再利用されていることでも分かるが、今しばらくは、「リノベーション」が老朽家屋の使用収益を延長維持する為の最善の選択肢であることに変わりはないだろう。

    しかしながら、個々に事情が異なり、権利と思惑が複雑に絡み合う区分所有物件については、今からでも「スクラップ&ビルド(=建替)」の法整備を含めた仕組みづくりを「国家プロジェクト」として推し進めておくことが、後世に対する我々の責務だと思う。

    建替を阻害する過剰に守られた借家権はとても気になるところである。法定耐用年数を超過した建物の普通借家契約は、最低期間の定め等、賃借人の権利を保護する一定のルールを設けたうえで、定期借家契約への変更を認めても良いと思うのは私だけなのだろうか。少なくとも、建替の為に貸主が請求される立退承諾料が、それまでに受領した家賃総額を遥に超えて支払不能額となる矛盾は軽減・解消されるべきだろう。

    区分所有で紛糾する建替協議を円滑に促進するためには、法定耐用年数を超えたならば、必ずしも5分の4の賛成が必要だとは思えない。築年によって必要議決権数のハードルを下げる柔軟性があっても良いと思う。

    新築分譲時に60~80年後の建替を予め売買条件として新築分譲する方法もある。結論を決めておくことは、紛争を未然に防ぐことにもなるのだ。

    勿論、誰でも建替の為の拠出金を用意できるわけでないから、等価交換と現金化の選択の自由も重要であるし、その為には、公庫に建替専門の貸出部門を設けて資金面を強力にバックアアップする必要があるように思う。
    また、税金の無駄使いが怪しまれる公団の空家を移転先としてだけでなく、建築期間中の「仮住まい先」として提供することも一案だろう。

    この様なテーマを議論すると、その場しのぎの「容積緩和」を発案する政治家やお役人の「したり顔」が目に浮かぶが、それは抜本的解決策ではない。なぜなら、安易な容積緩和を繰り返せば、いずれ建造物も街並みも容積緩和の限界値に達するからだ。都市計画は、百年単位の長期的視野をもって考えねばなるまい。
    それでも容積緩和で建替資金難を解決しようとするならば、隣接する建物所有者が互いに協力して「総合設計制度」を利用すべきだと思う。法定再開発に匹敵する「街づくり」を意識した方が有意義な事業となるだろう。

    これら建替事業は大きな経済的波及効果も期待できる。「AI」に追いやられた人々の雇用も生まれるに違いない。持続可能な経済成長を模索するならば、何も「仮想通過・仮想資産」や「IoT」といった革新的分野ばかりに拘る必要は無い。額に汗して働く「物造り」を見直しても良いのではないか。

    必ず解決策はある。より良い知恵を皆で出せば良い。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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