思うところ15.「AI」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

TOPコラム一覧

  • 思うところ15.「AI」




    不動産業界におけるAI(人工知能)の活用は、様々な合理化が期待される反面、底知れない不安も感じさせている。例えば、我々の行っている不動産の価格査定もあらゆるデータを基にしたAIの判断の方が常に正しいとすれば不要な業務となるだろう。金融商品のように常に時価が算出されるのなら、仲介人としての重要な役割である価格交渉も不要だ。宅地建物取引士のみならず不動産鑑定士の立場すら危うくするかもしれない。
    大規模マンションのコンシェルジュ(総合受付スタッフ)もAIが搭載された疲れを知らないアンドロイドが24時間にこやかに対応してくれるのならば、夜間警備員と共に職場を奪われることになる。既に証券業界ではAIによる高速自動売買が業績を大きく左右している。万が一、中央銀行総裁の地位をAIに与えるようなことになれば、それはAIの金融政策に支配されることを意味する。まさか総理大臣の地位まで奪うことは無いだろうが。

    かの国の大統領は誤解しているが、自国の自動車産業の職場を奪っているのは、隣国と隣国からの移民ではない。経営者が人件費の高い自国で自動車を製造しようとする時、国際競争に打ち勝つためには、オートメーション化により人件費を抑制するか、安価な労働力を提供できる移民に頼るしかない。それでも人件費の高い自国民を採用せよと言うならば、更に合理化して採用人員を減らすだけのことだ。つまり、職場を奪っているその正体は国力の違いにより生じた所得格差がもたらす「機械化」と考えるべきなのである。

    AIの多用により、これと同じことが起こらないだろうか。

    「世界一貧しい大統領」と言われたウルグアイ第40代大統領のムヒカ氏が2012年リオ会議(地球サミット国連持続可能な開発会議)において注目すべきスピーチを行っている。「人類は今消費社会をコントロールできていない。逆に人類の方がその強力な力に支配されている。」その美しいスピーチ全文を是非一度ご確認頂きたい。

    私は、AI活用が本当に人類に幸福をもたらすのか疑問に思っている。社会人になったばかりの頃を思い起こせば「パソコン」も「スマホ」も無かった。それでも何ら支障は無く効率的な仕事ができた。成果も努力・能力に正比例していたように思う。大きな商談を取り纏める為には「人間力」が問われ、交渉事も「やりがい」があった。今はどうだろう。インターネット戦略ばかりに重きを置く情報戦になっていないだろうか。「無料サイト」や「比較サイト」で無駄に競い合うことばかりに力を使っていないだろうか。

    インターネットの普及により、劇的な情報スピードで動く経済が、さらに「AI」と融合して進化を遂げた時、それが本当に豊かさを伴った社会となる保証はない。

    ふと思う。追いやられた人々(弱者)はどうするのだろう。AIがもたらす富は一部の強者(資本家)に集中するのは目に見えている。そうなれば弱者も黙ってはいまい。極端な格差社会は混乱紛争の火種となることを歴史が物語っている。

    そしていつの日か、人類の英知を飛び越えてAIに「感情」が芽生えた時、人類はAIをコントロールできると誰が断言できるだろうか。

    ムヒカ元大統領が来日した時、世界的に評価の高い、日本でも最新の自動開閉センサー付洗浄便座を紹介されての一言「私なら、トイレのフタを自分で開けることができます。」がとても印象深い。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

オフィスランディックは中央区を中心とした住居・事務所・店舗の賃貸仲介をはじめ、管理、売買、リノベーションなど幅広く不動産サービスを提供しております。

茅場町・八丁堀の貸事務所・オフィス, 中央区の売買物件検索
PAGETOP