思うところ128.「屋上防水」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ128.「屋上防水」




    <2022.8.1記>
    今回のコラムは少し建物管理寄りのテーマで「屋上防水」についての思うところ。大規模分譲のマンションなら然るべき時期に建物管理会社から屋上防水塗装を実施すべきとの提案が理事会になされると思う。前回の屋上防水塗装の実施から10年以上経過しているとしたら、むしろ実施すべきではないことを証明することの方が難しい。厳しい目をもって審議すべきはその工事費や塗装法の妥当性、請負業者の選定方法であって予算が許す限り屋上防水塗装の実施は少し早過ぎる位で丁度良いと思う。その時に的確な判断をするためにも次の防水塗装に関する基礎知識が必要となる。

    屋上防水の主流は今のところ「ウレタン防水塗装」である。液状のウレタン樹脂を塗ることで継ぎ目の無い防水層を作る。なぜこの方法が最も普及しているかと言えば理由は二つ、まず他の塗装法より安いから。もう一つの理由は、人の手で塗るから複雑な凹凸があっても施工可能なことである。裏返せば、人の手だから均一の防水層を作れるかは職人の技量に左右されてしまう。また、乾燥に時間が掛かるから出入りの多い場所(通路等)の塗装には向かない。(工期:3~10日)それと他の塗装法より耐用年数は8年~10年程度と少し短いのも事実。それでも費用対効果を評価して良いと思う。また、5年経過した頃にトップコートを再塗装すれば15年程度まで防水効果を保持することも可能だ。留意すべきは、下地を十分乾燥させてから施工すること。無理な短期仕上げを請負業者に強いたり、悪天候を無視したりすれば、逃げ場を失った水分が「膨れ」と呼ばれる劣化症状を引き起こす。(雨漏りなどの水分を含んだ下地に適する「通気緩衝工法」というものもあるが少し割高になる。)

    「FRP防水塗装」という選択肢もある。(FRP=Fiber Reinforced Plasticsの略、繊維強化プラスチックのこと)液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を加えて混合し、この混合物をガラス繊維などの補強材と組み合わせて一体にして防水層を作る。FRPの硬化は速い(施工後1~2時間程度)から工期は僅か1~2日と短くて済む。それでいて耐用年数は10年~12年程度と少し長め。また、ウレタン塗装と同じく継ぎ目が無いから耐水性も良い。防水層は軽量でありながらも衝撃や摩耗にも強く耐荷重性に優れている。しかしながら、ウレタン塗装に比べて少し工事費が割高になるし、紫外線に弱いことを考えれば、屋上防水よりもバルコニーやベランダに用いるべき塗装法と考えた方が良いと思う。

    面積が広く凹凸の無い屋上なら「シート防水塗装」を検討すべし。温度変化には強いが紫外線に弱いゴムシート防水でも耐用年数は10年~15年程度、熱にも紫外線にも比較的強い塩ビシート防水なら10年~20年程度といったところだ。いずれにせよ、明らかにウレタン塗装防水より耐久性がある。また、FRP防水塗装程ではないにしても工期も2~4日と短くて済む。但し、前述の二つの塗装法と違って継ぎ目ができる。よって、シート自体の防水力は高くとも、いざシートの結合部分(ラップ部分)に隙間ができると防水性が著しく低下する弱点がある。施工時の接着剤の塗布量の不足・ムラも困るが経年劣化による接着力の低下も要注意。(私は新築マンションの屋上で執拗に継ぎ目を突いて悪戯するカラスを目撃したことがある。)

    より面積が広い商業施設や校舎等の屋上なら「アスファルト防水塗装」も一案。従前の防水塗装がそうであるならば当然最有力候補になるはずだ。この度紹介した塗装法の中でも最も防水性が優れており、耐用年数も15年~25年程度と最長が期待できる。手間が掛かるので工期は5~7日程度要するが合成繊維不織布のシートに、液状に溶かしたアスファルトを染み込ませてコーティングしたルーフィングシートを二層以上に仕上げる積層工法で強固な防水性を生み出すことができる。一概にアスファルト防水塗装といっても常温工法・トーチ工法・熱工法と様々な手法に枝分かれするが、これ以上掘り下げて説明することは不要だと思う。この場においては「費用は掛かるが(車両通行が可能な位に)防水性と耐用年数は最強!」とだけ理解して貰えば十分だろう。

    総括するとウレタン防水は「防水材を塗る」、シート防水は「防水材を貼る」、FRP防水とアスファルト防水は「防水材を塗る+貼る」塗装法だと考えると分かり易い。また、それらの長所を順位付けし、工事費の割安感なら、①ウレタン防水>②FRP防水≒③シート防水>④アスファルト防水の順、工期の短さなら、①FRP防水>②シート防水>③アスファルト防水>④ウレタン防水の順、耐用年数なら、①アスファルト防水>②シート防水>③FRP防水>④ウレタン防水の順、と要点だけ整理して覚えておくと良いと思う。

    決して工事費見積りの数字のみで判断してはならないのである。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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