<2025.8.18記>
此処は不動産会社のコラム欄である。だからタイトルにある二八(にはち)とは蕎麦粉とつなぎの配合比率を語るものではないことは言うに及ばず。我が国では多くの企業が八月半ばの一定期間を一斉休暇(夏季休暇、お盆休み)とする。当社においては本日がその連休明けの初日である。私が二八蕎麦の講釈を垂れる筈もなく、二八の二は二月(如月)、八は八月(葉月)で商売上の二八(にっぱち)、所謂「二八の法則」、「ニッパチ景気」についての思うところ。
因みに当社の今年の夏季休暇は8月10日より昨日(17日)迄とした。夏場の一時的な不景気を茶化すつもりは毛頭無いのだが、「儲かってまっか?」と問われても「ボチボチでんな!」と威勢よく切り返せない時節である。そんな時に「ニッパチだからねぇ~。」などと2月と8月の業績不振を本気で慰め合うこともあれば、「暑いですね!(寒いですね!)と同じく他愛も無い挨拶代わりにもなる。逃げ口上巧みな営業マンなら「ニッパチ(の八)ですから!(仕方ないじゃないですか!)」と開き直りの切り札として使うかもしれない。やや古臭い言い回しだから若い世代にはあまり馴染みが無いと思う。
フランス人の夏季休暇(=ヴァカンス、1ヶ月程度)と比べれば我が国の夏季休暇(=お盆休み、1週間程度)はやや物足りないと感じている人が多いと思う。それでもこの時とばかりに海外旅行する人もいれば帰省して墓参りする人もいる。墓参りと言えば、「お盆」は故人を偲ぶ慣習であるという点においてメキシコの死者の日(骸骨祭り)に似ているように思う。その死者の日はイベントとしての盛り上げ方がハロウィンに似ている。ん、ならば、お盆≒ハロウィン?いやいや、流石にそれは三段論法の濫用というものか。
二八の法則を「2月は寒さで、8月は暑さで購買意欲が下がる」と大雑把な解説をされても意味が分からないだろう。これはあくまでも我流の解釈なのだが、正月物価と称される年末年始の一時的なインフレ下で散財した人々がその反動で心理的に節約モードに入るのが2月、猛暑の時に行楽や帰省で肉体的疲労が蓄積、消費疲れの重なりもあって財布の紐が固くなるのが8月、だから消費活動が鈍る2月と8月(ニッパチ)はどう頑張っても思うようには儲からないものだ、その様な言い訳にも似た商売人の不況分析が世間で言うところの「二八の法則」というものではないだろうか。
さて、果たして不動産業界に二八の法則は当て嵌まるのか?否、実のところ2月は全く当て嵌まらない。確かに稼働日数が他の月より数日少ないのは事実だが、コラム№120(法人契約)でも述べた通りむしろ真逆。なぜなら、引越しのピークを3月、4月に迎えるのが一般的であるということは、賃貸部門にとってはその少し手前の2月には契約のピークを迎えるということである。売買部門も住替えトップシーズンの3月を年度末とする不動産会社が多いから2月は翌月の決算を意識して業績を上積みすべく各社競って積極的な営業を展開する(2月契約→3月決済)傾向がある。それは売主の恣意的な駆け込み契約や前倒し決済と誤解されがちだが、4月には新居で新生活をスタートしたいと願うお客様も多く、所謂「Win-Win」の関係性を築き易い。
では、8月はどうか。夏季休暇を使って家探しをしたい人は潜在的には一定数いると思うが不動産業界全体の動きが止まってしまうから満足な対応ができない。よって、精神論のみを以て営業しても効率が悪過ぎる。売買仲介に照らせば売主が旅行や帰省で不在なら内見希望者がいても案内はできない。空室の賃貸物件であっても物元業者(貸主側仲介会社)が休みとあっては入室が不可能。だから合理的な経営判断により足並みを揃えて長期休みとせざるを得ないし、長期休めば自ずと売上は落ちる。
結論、二八の法則は不動産業界には八月のみに当て嵌まる。その八月に我社はなぜか大忙し。稼働日数が少ないだけに案内・契約・決済の予定が過密日程になっている。「嬉しい悲鳴」と言えばそれまでなのだが・・・。何はともあれ夏季休暇明けに集中することの多い水廻りや空調の故障・不具合の緊急連絡等、管理物件の入居者からの「嬉しくない悲鳴」は私の耳に入らないことを祈る。(コラム№178「エアコン故障」参照)
このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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