思うところ35.「OPENルーム」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

TOPコラム一覧

  • 思うところ35.「OPENルーム」




    <2018.7.4記>
    中古マンションの効果的な販売手法として「OPENルーム」というものがある。本コラムの読者も週末の街で良く見かけると思われるあのイベントだ。物件の良さを理解して貰うには、実物を見て貰うことが最も効果的であることは間違いない。仕事が一段落したある日、同業他社の開催する「OPENルーム」に一人の客として立ち寄ってみた。

    駅前で看板に括り付けてあるチラシを手に取ってみたのがきっかけだった。だが、案内図が見当たらない。地縁性を重視したイベントだからマンション名だけで判る人をターゲットに絞っているのだろうかと首を傾げた。私なら片隅でも、裏面でも良いから最寄り駅からの簡略化した案内図を加入しておく。(そうでないと物件に辿り着けない。)地下鉄なら最寄りの出入口№を明記のうえ、住居表示を少し大きめに加入しておくと徒歩による来場者にも、車(=カーナビ)利用者にも判り易いものとなる。前日の夜間にでも物件周辺にポスティングしておくと集客UPが期待できるが、ポスティングの是非が問われる昨今、広告予算が取れるならば当日の朝刊に折込んでイベント告知するのも良いだろう。(新聞専売所に対象物件周辺に配布して欲しい旨頼むとそのように努力してくれる。費用対効果を追求する経営感覚も欲しい。)

    閑話休題、オートロックのマンションではないので、いきなり住戸を訪ねた。「こんにちは~。突然でごめんなさい。」そう言って遠慮なく室内に入ると、新人らしき若手営業マン(以下「A君」)があたふたとマンガ本を隠しているところを目撃してしまった。見学者がいない時の体たらくが目に浮かぶ。せめて宅建資格の問題集程度にしておいた方が良かろうに。

    弛(たる)んでいる現場であると確信して意地悪な気持ちになった。「このマンションの最大の魅力は何?」と質問してみた。A君、しばらく考え込んで「立地ですね。駅にも近いし。」との回答。「学区は?スーパーは?」矢継ぎ早に質問してみる。手元資料のお蔭で答えは間違ってはいない。だが、私なら駅からの住宅地図を貼り合わせて視覚に訴える資料を用意しておく。蛍光ペンで商業施設はピンク、学校は黄色、公園は緑、といった色分けをしておくとその位置関係が一目瞭然だ。

    意地の悪い質問をしたせいか、A君は少し無口になる。(面倒臭い客だと思っているのが表情に出ているが、同業者と見抜いての無口なら高く評価する。)私なら他愛もない会話の中で、その属性(職業や家族構成)や動機(購入検討の事由)を探る。あくまでも自然体が重要であり、売らんが為の質問攻めは逆効果になることを承知している。

    たとえ狭域営業戦略であっても、せっかく開催するイベントならば、沢山の人に見学して欲しいし、早く成約したいと思うのが当然である。その為の努力は惜しむべきではない。それは些細な事の積み重ねに過ぎず、運・不運もあって即効性は無いかもしれないが、必ずやお客様の評価に差が出てくるものである。

    同マンション内から売却相談があるかもしれない。(同マンションの成約事例を整理しておくと良い。)対象物件が駄目でも他住戸や近隣類似物件を仲介できるかもしれない。(類似物件の他、異なるタイプの売却情報も用意しておくと良い。)リフォームの請負工事が受注できるかもしれない。(施工事例を写真で見せたい。)その物件が売れなくとも、そのコミュニティの人々に会社や自分を知ってもらう絶好の機会だ。

    そう考えると「OPENルーム」の開催手法や販売ツールのアイデアはその他にも沢山ある。が、本コラムで披露はしない。それは、競合他社の模倣を恐れてではなく、会社や担当者が独自に発案してこそ価値があることだと思うからだ。

    A君に名刺を求めるも名刺を切らしていると言う。玄関で革靴を履くにあたって靴ベラを探すが見当たらない。他社の営業方針を悪く言うつもりは無いが「心構え」から出直した方が良いと思った。本当はチラシを手にした時からそう感じていた。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

オフィスランディックは中央区を中心とした住居・事務所・店舗の賃貸仲介をはじめ、管理、売買、リノベーションなど幅広く不動産サービスを提供しております。

茅場町・八丁堀の貸事務所・オフィス, 中央区の売買物件検索
PAGETOP