思うところ１２１．「EV」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

思うところ１２１．「EV」

＜2022.4.1記＞
今時「EV」と言えば、電気自動車（Electric vehicle）を指すことが多い。だが、不動産業界で「EV」と言えば、一般的にはエレベーター（Elevator）を意味する。（「ELV」と表記することもある。）限られた広告紙面においては、分かり易さを優先しつつも簡略化しなければ文字だらけになってしまう。よって、「エレベーター」とカタカナで6文字を使うより、アルファベット2文字「EV」の表記が多用されると言うわけだ。

さて、そのEVであるが、係る常識にある種の異変が起きているかもしれない。先日EVに乗り込んだ直後のこと、EVに向かって妙にゆっくり歩いてくるご老人を発見したので暫し扉を開けて待っていた時である。「ありがとうね。今コロナ禍でしょ、密になっちゃいけないって言うから一緒に乗り込んで良いのか迷っちゃってね。」まさに当方のお節介気味の親切心と先方の気配りがすれ違ってしまった瞬間だった。そのご老人、本音は同乗したくなかった可能性もある。そうは言っても9人乗りEVに1人で乗った時、近づいてくる人がいるのが分かっていながら能動的に扉を閉めるのは心苦しい。

あるマンションのEV内で小学生に「おはよう！」と声を掛けたところ、無表情のまま蝋人形のように固まっていた。社内でその話をしたら「社長、その子が悪いわけじゃ無いんです。今、小学校では知らないおじさんに声を掛けられたら警戒するよう指導されているんですっ！」と私の「当り前」そのものが古くさいのだと意見されてしまった。何とも難しい時代になったものだ。それでも、その子は緊張していて挨拶を返せなかっただけか、極度の人見知りの類いだったと信じたい。

ある人が遭遇した出来事である。超高層タワーマンションで数人が低層階のボタンを立て続けに押した時のこと、同乗していた小学生が「下々の者どもがぁぁぁ」と小さな声で唸っていたそうだ。小学生とは思えぬ時代錯誤の言い回しからして、きっと愚かな偏見を持つご両親が悪ふざけした時の会話を真似たものだと思う。だが、断じて物理的高低差とヒエラルキーには何ら関連性は無く、高層階に住まうことに過剰な優越感を持つのはおかしい。高所が苦手な人もいるし、眺望より広さや間取りが優先事項の方も多い。当社が営業を注力するベイエリアにおいては、ビル群を眺めるよりも水面（みなも）が見える低層階の眺望の方が優れていることもある。また、水面と同じく樹木にも同様の効果があり、日本橋兜町のある事務所マンションでは桜並木を望む北向き2階～4階の方が南向き高層階よりも人気が高い。

EV普及の黎明期（昭和30年代、40年代）は、密室空間であるが故にEV内で酔っ払いが小便をしたり、痴漢事件が頻発したり管理運営に苦慮したそうだ。その対策として防犯窓付のEVが増えたし、最近では当然のように防犯カメラが設置されている。その録画機能は犯罪抑止力の効果絶大である。残念ながら当社が関与するマンションEV内で小便された事件はつい最近の出来事だ。やむなくEV内のマットはリース契約（月2回の定期交換）に変更、防犯カメラを設置することとなったのだが性悪説を実証するかの様な事件であり何とも情けなく思う。

最後にEV豆知識を披露しておく。マンションの小型EVには「秘密の扉」があることが珍しくない。EV内の壁面は汚損毀損防止のため、何らかの養生がされていることが多いからあまり目にすることがない扉だ。その隠し扉はトランクの観音扉（腰高）なのだが滅多に使用されることのない「開かずの扉」である。なぜなら、緊急事態にのみ利用されるからだ。その緊急事態とは何か、要するに棺桶の搬出入だ。ご遺体が収まる棺桶を縦に運ぶことは心理的抵抗感があってできない。また、非常階段を利用すると斜めになってしまうから、この時ばかりは管理員にトランクの鍵を開けて貰って棺桶を水平に保つスペース（奥行）を一時的に創出する。場の空気を大切にするセンスの良い営業マンは、救急搬送時のストレッチャーで説明すると思う。案内時にトランクの用途を質問された時、私の悪戯心もあってストレートに棺桶を例にして説明したら、そのお客様はお通夜の場面を想像してしまったのか表情が強張っていた。（それでいて妙に感心もしていた。）引越作業やリフォームの長物の運搬では説明がつかない。その程度のことでは開けることが許されない「秘密の扉」なのである。

EVに関するエトセトラ。本日は、エイプリールフールと呼ばれる4月1日だが、全て嘘のような本当の話である。