<2026.6.1記>
本コラムの挿絵は食用(ショクヨウ)のバイ貝(ばいかい)の写真、本コラムのテーマは職用(ショクヨウ)の媒介(ばいかい)である。しょうもない駄洒落に始まる書き出しをどうか笑ってお許し頂きたい。さて、此処からは真面目なお話。本日の思うところは媒介(媒介契約)について。不動産仲介業務は媒介契約を結ばずしては成り立たないことは言わずと知れたこと、「今更?」の感がある程に基礎的なテーマだ。不動産取引に豊富な知識と経験のある玄人跣の御仁には読むに値しない内容だと思うが初めて不動産を売買・賃貸する人には自分が有する媒介の選択肢とその特徴を正しく知っておいて貰いたい。
媒介の種類は三種類。一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の三つである。お客様から「どの媒介契約が一番良いの?」と聞かれることもあるが、「どれが優れているか」ということではない。それぞれに長所と短所があると考えた方が良く、「どれが自分の案件に適するか」という考え方をするべきだと思う。尚、本解説は売主、貸主に向けてのものである。なぜなら、買主・借主側の媒介は形骸化しているように思えてならないのである。売主・貸主の信任を得て一本化された窓口(物元業者)ならともかく、特定の仲介人(客付業者)を通さねば買えない(借りられない)といった過剰な束縛はあってはならないし、実務上はあり得ないと思う。
<一般媒介>
一般媒介は依頼先を明らかにする明示型と依頼先を明らかにしない非明示型の二つがある。最大の特色は「重ねて複数の仲介人(宅地建物取引業者)に依頼することが可能であること」である。よって、依頼主は依頼先を増やして成果を比較検証できる。また、自己発見取引の制限も無い。自ずと競争原理が働くことになる。但し、依頼される側の仲介人には業者間の情報交換システムである不動産流通機構(=Real Estate Information Network System、通称は頭文字を取って「REINZ」、読みは「レインズ」)への登録義務(≒情報公開の義務)は無い。その上、営業報告義務の定めも無いから良くも悪しくも依頼主と仲介人とはライトな関係になり易い。契約有効期間に法的な制限が無いことは意外と知られておらず、3ヵ月(以内)とすることが定着しているのは行政指導によるところが大きい。この媒介の留意点は「闇雲に窓口(依頼先)を増やすことは時として逆効果になる。」ということである。なぜなら、仲介手数料は成功報酬であるからだ。仲介人にとって不確実な仕事に対しては注力しにくく、広告費も掛けにくい。仲介人が面従腹背であったり、競合他社を誹謗中傷したりするような過当競争では良い結果は得られないだろう。但し、不動産流通機構への登録義務(情報公開の義務)が無いことを逆手に利点とすることもできる。つまり、本来の趣旨とは言えないが時間が掛かったとしても秘密裏に不動産を処分したい時などはむしろ好ましい契約形態となり得る。
<専任媒介>
依頼先との緊密さで言うと専任媒介は一般媒介と専属専任媒介の中間に位置する。文字通り依頼先は1社のみ。その代わり仲介人は不動産流通機構に7日以内に登録して情報公開しなければならない。また、14日に1回以上文書又はメールにて営業報告の義務を負う。契約有効期間は専属専任媒介と同じく3ヵ月以内としなければならないが一般媒介と同じく自己発見取引が容認される。やや中途半端な契約形態である気がするのは私だけだろうか。事実、どうせ窓口を一本化するなら専属専任媒介を選ぶ人が多い。だが、仲介会社は1社に絞りつつも、知人や親族が購入する可能性が残されており、かつ直接取引に伴う契約手続きを完結させるスキルを有する売主・貸主ならばこの媒介を選択すると良いだろう。
<専属専任媒介>
専任媒介と同じく依頼先は1社のみ。しかも依頼者の自己発見客(例:知人が買う・借りる等)でさえ直接取引は認められない。依頼される仲介人側の責任も重く、不動産流通機構に5日以内に登録して情報公開しなければならないし、7日に1回以上文書又はメールにて営業報告の義務を負う。仲介人にとって責任は重くなるが確実に利益が見込めるので最も望ましい媒介である。売主・貸主が仲介人を信頼している証でもあり、「抜き行為(コラム№37)」や「囲い込み(コラム№36)」の抑止力にもなる。自己発見取引が認められないとは言っても契約は中立の立場の仲介人が間に立って然るべき重要事項説明をすべきであるし、契約書作成も任せた方が良いと思う。知人、親族だからこそ第三者からのアドバイスを受けた方が良いこともある。自己発見取引の時は仲介手数料を値引きする約束を事前に取り付けておけば良いだけのことだと思う。(因みに当社は自己発見取引の仲介手数料は半額!)
それぞれの媒介の特徴は以上の通り。言い回しはともかく誰が解説しても同じような内容になるだろう。くれぐれも契約形態の特徴を十分ご理解のうえで媒介を選択して頂きたい。仲介人と媒介の選択は依頼者の専権事項でありプロジェクトの成否を大きく左右する第一歩。その選択とその結論に至った理由は頼まれる側(仲介人)のやり甲斐に大きな影響を及ぼすものである。

このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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