思うところ164.「垣根」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ164.「垣根」




    <2024.2.1記>
    「かきねのかきねの曲がりかど」そんな歌い出しの童謡「たきび」を耳にして郷愁を覚えるのは私だけなのだろうか。確かに田舎育ちの私には当り前のように「焚き火」の実体験があるが東京都心部では「落ち葉焚き」など御法度とも言うべき迷惑行為であり、今時の子供達はそれを目にすることすら稀になってしまったと思う。私の知る限りに於いて各自治体で定める条例以外に敷地内での「焚き火」を違法とする明文化された法律までは無いものと認識しているが、近隣からすぐに苦情が出るから実際にはできない事だとも思っている。それに煙が立ちのぼれば消防署が出動して大騒ぎになりかねない。お盆に玄関先で行なう「迎え火・送り火」といった伝統行事も同様の理由で見かけなくなった。

    童謡「たきび」の歌詞からしてその場面にある「垣根」はサザンカと断定できる。そう、1983年(昭和58年)に大ヒットした演歌「さざんかの宿」の曲名にもある秋の終わりから年末に掛けて美しく咲き、咲いては散る山茶花(サザンカ)のこと。山茶花は開花時期(10月~12月)こそ少し異なるが椿(12月~4月に開花)と見た目がほぼ同じ常緑広葉樹であり、日本家屋の外構に用いる植栽として実にしっくりくる。その様に山茶花を持ち上げておきながら要注意点も一つ。それはツバキ科の葉は総じてチャドクガ(茶毒蛾)という毒蛾の幼虫(毛虫)の大好物であること。その毛虫に刺された痒みは蚊に刺された痒みとは比較にならない程の強烈なもの。しかも、(私の経験上)その痒みは5日以上引かない。刺された直後は痒いというよりも患部がピリピリするから幼い頃の私はイラガ(別種の毛虫、本来はこちらが「電気虫」)と区別すること無く毛虫を総称して「電気虫」と呼んでいた。(じんま疹と勘違いして病院に駆け込む人もいる。残念ながら痒み止め軟膏もあまり効かない。また、服に付いた毒針毛は洗濯では容易に取れないからご注意を。)だから、防火の観点からすれば迷惑行為と見做されかねない「落ち葉焚き」であっても、それは単なる清掃作業というだけでなく害虫駆除(幼虫・卵の焼却)・樹木の病気予防(滅菌、例:柿の落葉病予防)として効果的な慣習だったわけであり、草木灰(強いアルカリ性、草木の種類にもよるが炭酸カリウムと石灰分を豊富に含む)を疲れた土(=連作で酸性に偏った土)のpH調整等の土壌改良(私ならジャガイモ種芋の切り口に腐敗防止の為に使う。)に有効活用できることも含め、合理的な先人らの生活の知恵だったという穿った見方もできなくはない。

    話を「垣根」に戻そう。個人的には洋風家屋ならレッドロビン(意味:赤いコマドリ)がお薦め。この園芸品種(「カナメモチ」と「オオカナメモチ」の掛け合わせ)は季節を問わず真っ赤な新芽が出てくる。寒さにはやや弱いが病気に強く成長が早いから小さな苗木から始めても短期間で垣根ができあがる。(当社の保有地で実証済)遠目には赤い花が咲いているかのようで美しい。本来は春に真っ白い小さな花を、秋には赤い実を付けるのだが、垣根としての体裁を保つべく頻繁に刈り込むことが多いので花も実も目にする機会は思いの外少ないと思う。

    敷地への侵入防止効果を期待できるのは柊(ヒイラギ)や柘植(ツゲ)の木だろう。モクセイ科モクセイ属の常緑高木である柊は葉に棘状の鋸歯(=「きょし」、ノコギリ状の細かい切れ込みのこと)を持つから触れると痛い。不法侵入者も敢えて柊の垣根を侵入口として選択し、わざわざ痛い思いをしながら忍び込むことはすまい。その抑止力こそが邪気を払う縁起木とされる所以だと思う。ツゲ科ツゲ属の常緑低木である柘植も侵入防止効果はなかなかのもの。柊のような鋸歯を持つ葉はなくとも葉が密に生えるから人の侵入を阻むことができる。もし、無理に垣根を通り抜けようものなら枝が肌にあたってチクチク痛い。それに柘植の枝でついたひっかき傷は些細な傷口でも妙に派手なミミズ腫れになる。私の個人的な体質(アレルギー)の問題だけではなく、ごく僅かながらも何らかの毒性があるのではないだろうか・・・。今以て幼少期から抱える素朴な疑問のままである。

    この度のコラムで戸建に関係深い「垣根」について触れたのは幻の新築戸建分譲プロジェクトに思いを馳せてのこと。顧客の要望に応えて新潟県上越市のご実家を開発用地(農地転用と国土法の届出済)として当社が買受けたものの、あまりにも遠隔地ゆえに自社で分譲することが叶わなかった。やむなく地元の不動産会社に開発許可を停止条件として受け皿になって貰い全てを委ねることにした。予定通りの開発許可が得られれば7区画(平均70坪程度)の戸建用地に生まれ変わる。できれば、建物プランのみならずランドスケープ(空間デザイン)に至るまで販売プロジェクトに参画したかった。本来は不動産会社の腕の見せ所(商品企画力を発揮できる好機)であり、当社のブランディング戦略で称するところの「ランディア上越新光町」として手掛けたかった。その心残りがあって戸建関連の題材「垣根」を取り上げた次第である。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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