思うところ163.「矛盾Ⅱ」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ163.「矛盾Ⅱ」




    <2024.1.15記>
    我が家のトイレのペーパーホルダーは便座の正面に取り付けてある。よって、否応なくトイレットぺーパーを眺めながら用を足すことになるのだが、暫し見詰めてふと思った。「この再生紙で作られたトイレットペーパーは本当にECO(環境保護)と言えるのか?」私は製紙業に関して全くの門外漢であるから的外れな疑問かもしれない。だが、再生紙なら純白であるのは不自然だと思うのである。純粋に資源の保護を目的に古紙を再生したのなら本来は美しくもない何らかの色がついていて然るべきだと思うし、不規則な模様があってもおかしくない。(事実、江戸時代の再生紙は見た目は宜しくなかった。)もし、その純白が塩素系の薬剤を使って古紙パルプ(植物繊維)を漂白した結果ならば、汚泥の焼却灰にはダイオキシン(非意図的に副生成される猛毒物質)が含まれるのではないだろうか。技術革新により今では問題無いと製紙会社に反論されるかもしれないが、ありのままの色合いのトイレットペーパーの方が環境保護に関心のある良識人には売れる気がする。環境保護を謳いながらのその過ぎたる白さに「矛盾」を感じてしまうのは私だけなのだろうか・・・。

    不動産業界で紙の公害と言えば、郵便受けに無造作に投函される夥(おびただ)しい量のチラシ、所謂「チラシ公害」である。節度あるチラシ投函に大きな問題は無いように思うのだが、ある大手不動産会社は担当エリア分けもせずに各営業所が挙(こぞ)ってチラシ投函をしていた時代があった。その結果、同一マンションの集合郵便受けに同一会社のチラシが同日複数枚投函されるという異常事態が日常茶飯事となっていた。当然そのコミュニティに住まう人々の堪忍袋の緒が切れて「いい加減にしろ!」となる。ところが、不動産会社のチラシ投函に批判的であった人が、いざ自宅の売却が苦戦するや「チラシくらい撒いたらどうなんだ!」と営業マンに苛立ちを露わにすることがあった。焦る気持ちも分からぬでもないが同一人の発言としては些か矛盾を感じざるを得なかった。実物を見学してもらうOPENルームに対する非難にしても然り。「OPENルームなどけしからん、コミュニティの風紀を乱す!」と怒鳴っていた人が自宅の売却となるや掌返しで「OPENルームくらいやってみたら?」と逆提案してくる始末。残念ながら主義主張に一貫性が感じられなかった。まぁ、いずれも随分昔の話(私の会社員時代の出来事)であるのだが。

    同じく矛盾を感じた事案としては、集合郵便受けへのチラシ投函を厳しく取り締まるマンション(理事長自らが管理員室で一日中モニター監視)でOPENルームを開催した時、そのお知らせが苦情にならないよう、きちんと封筒に入れたお手紙(実物見学のご提案)を各戸のドアポストまでお届けした。ところが今度は「なぜ私の部屋だけ手紙を入れないのか!」と宣(のたま)う。「入れるな!」というから入れなかっただけなのに今度は入れなかったことに激怒する。一体我々にどうせよというのか・・・。実際には自分が住まうマンション内に発売住戸があれば少しでも早く教えて欲しいと思う人は多い。年老いた両親を呼び寄せたい人もいるし、子供・孫達に自分の近くに住んで欲しいと願う人もいる。しかしながら、昔に比べて新聞の定期購読者は激減しており、折込チラシの効果には然程の期待はできない。また、高齢者はパソコン・スマホの扱いに不慣れな人が多くインターネット広告の効果にも限界がある。どうしてもお届けしたい心のこもった売却情報が怪しげなチラシと同一視されることには異議を唱えたい。反省すべきは不動産業界の無神経さであることは間違いないが、もう少し「穿った見方」が必要だと思う。

    日本人の半数近くが「穿った見方」という言葉を誤用していることをご存じだろうか。「捻くれた見方」や「疑いを持った見方」として用いるのは全くの誤りである。正しくは、「本質を的確に捉えた鋭い見方」である。つまり、「穿った見方だね。」と言われたら本来は嫌味を言われたことにはならず、優れた洞察力を賞賛されたと解釈するのが正しい。見せかけの純白を「善」としながら、ひたむきな努力を「悪」と決めつける人がいる。だから、コラム№1「矛盾」の続編として今一度「矛盾」を穿つ鋭い視点の大切さを述べてみた。

    さて、冒頭の話に戻るが製紙会社の商品開発のご担当者に提言する。「美しくないトイレットペーパー」の商品開発を是非検討して頂きたい。漂白の工程が無い分、少し割安な価格設定にすれば消費者に喜ばれるだろう。または、「純白」と同じ値段であったとしても売上金の一部が環境保護団体に寄付される仕組みにするなら世間から賛同が得られると思う。もしかしたら、採れたての「泥つき野菜」や本来廃棄処分になる「ワケあり○○○」、「不揃いの○○○」のようにその本質が良いものだと理解されれば意外なヒット商品になるかもしれない。偽りの純白に矛盾を感じるのは私だけではないはずだ。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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