思うところ57.「検証」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ57.「検証」




    近年の政策的な超低金利の恩恵を受け、物件価格比100%の借入額であっても、35年の長期にて資金調達できる購入者ならば、を「借りる」より「買う」方が負担減となる奇妙な現象が長らく続いている。だが、住宅取得の環境が、「恵まれ過ぎている」からこそ、主体性ある「検証」をしてからの購入をお勧めしたい。とかく営業成績に追われる不動産会社の営業マンは「良い面」ばかりアピールする傾向があるし、過剰に心配する親族は、根拠なく「やめておけ!」と宣(のたま)うものである。

    コラム№9「家」でも述べた通り、こと居住用不動産(家)については、損得よりも「無理のない資金計画」を重視して欲しい旨を述べた。それは、やむなく賃貸したとしても「持ち出し」のない月額返済となる資金計画に重きを置くことを意味している。要するに、購入時の年収(返済比率)のみをもって健全性を論ずるよりも、不測の事態に備え、比較的数値が安定している「家賃相場」との対比で「検証」すべきことを申し上げているのである。

    まず、「検証」するにあたって留意すべきは「期間」である。多くの金融機関80才完済を条件としている為、45歳未満の人が借入期間35年で資金調達できる利点を活かすことは、手持資金(頭金)が乏しい局面であっても、月額支払いを家賃相場以下とする為に有効的な手段である。しかしながら、勤務先の定年(退職年齢の内規)から実年齢を減じた年数を「本来あるべき借入期間」として試算してみて欲しい。その支払額を見たら驚愕するかもしれない。また、リタイヤする年齢を目標に繰上返済を重ねて早期無借金化を決意することになるのではないだろうか。

    次に留意すべきは、「金利」である。検証する為の金利は、敢えて4%で試算するのが良い。現行の低金利は異常値である。当面の低金利を享受すべく民間金融機関からの借入を選択するにしても、舞台裏では、融資案内に記載された魅惑的な低金利ではなく、変動リスクを考慮した3.5%〜4%程度の審査金利が用いられているはずである。因みに、昭和の終わり(バブル経済絶頂期)の住宅融資金利は、6%超に達したこともあったが、不動産価格が著しく高騰し続ける当時は、それでも特段の驚きは無かった。

    築年」にも留意されたい。借入年数は、敢えて「法定耐用年数-築年数」で試算するのが良い。RC造の税務上の耐用年数は47年である。よって、築20年のマンションなら借入期間27年で「検証」することになる。勿論、堅固な建物は、適正な維持管理をすれば、60年以上使用収益可能であるので、この借入期間はあくまでも「検証」の為の目安に過ぎない。(築37年超は、一律借入期間10年にて試算することを推奨)

    最後に「月総支払額」を確認しなければならない。これは、投資用不動産の「実質利回り」を算出する場合の考え方にも相通ずるのだが、融資金の月返済額に月額の共益費(管理費・修繕積立金等)を加算のうえ、固定資産税・都市計画税を月額換算(1/12)して更に加算したものを「月総支払額」と考える。(本来は、共益費の妥当性も分析、値上げの可能性も考慮すべきである。)

    「月総支払額」と「家賃相場」が近似値なら一先ず大きな問題は無いだろう。「月総支払額」が「家賃相場」を大きく上回るなら頭金の増額をご一考頂きたい。「月総支払額」が「家賃相場」を大きく下回るならば、借入期間の短縮も検討できる。良くも悪しくもその乖離が異常値ならば、その原因を究明する必要がある。

    多角的に「検証」していくと、「盲点」や「落とし穴」に多々気付くことになるだろう。それでも賃料が高値維持される都心部においては、低金利の波に乗るのも良いと思う今日この頃である。

    「潜むリスク」を十分に理解した「賢者」なら、きっと成功する。また、そう願っている。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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