思うところ129.「フロアコーティング」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ129.「フロアコーティング」




    <2022.8.17記>
    前回のコラムでは、建物の外側(屋上防水)について触れた。ならば、この度のコラムは建物の内側(専有部)に焦点を絞ってみよう!前回「塗装」を取り上げた流れで「フロアコーティング」とする。些細な知識と謂えども読者のお住替えの際にお役に立てると嬉しい。

    「フロアコーティング」なるオプション工事は、新築マンション購入時や床貼替えを伴うフルリフォームを機に提案されることが多い。移動困難な家具・家電の無い完全なる空室となるそのタイミングこそが発注者・受注者の双方にとって絶好の機会であるからだ。しかしながら、予想外の見積額を見て驚く人も多い。中には怒り出す人までいる始末である。割高に感じてしまう原因は床のワックス掛けの対価と混同していることにあると思う。

    ワックスは床材の表面を保護するために塗るもの。最近はワックス掛けの手間を省くべく、ノンワックスタイプのフローリング(木目調に印刷された多層フィルムなどを貼ったもの)が普及している。勿論、ノンワックスタイプの床材にワックス掛けをしてはいけないと言うわけではないのだが、ワックスと面材の相性が良くないと馴染んでくれない。

    フロアコーティングも同じ目的であり、面材保護の皮膜を作ることに相違ないが、手指のお手入れに喩えるならハンドクリームとマニュキア以上の差がある。ワックス掛けなら誰でもできるがフロアコーティングは専門業者でないと難しい。主だった技法は「アクリルコーティング」「ウレタンコーティング」「シリコンコーティング」「ガラスコーティング」「UV(ultraviolet)コーティング」である。(以下「コーティング」を省略して表記)

    安さ優先で選ぶなら「アクリル」だ。残念ながら、この度紹介するコーティング技法の中で耐久性に関しては最も劣る。それでもワックスが4ヶ月程度しかツヤを保てないのに比べれば、2年程度は耐久性があるし、水性だから剥離し易く再施工が容易である。また、施工時の溶剤の臭いで不快な思いをすることもないし、ナチュラルな仕上がりになる。そもそもワックスの主成分と同じアクリルなのだから「ワックスの長持ち版」と考えれば良い。(自然乾燥に2日~3日要する。)

    「アクリル」ほどで無くとも「ウレタン」も比較安価だ。やや控えめな光沢が好みの人向きだと思う。(光沢度調整可能)ウレタン樹脂を素材とする技法で水性と油性がある。気掛かりなのは耐久年数が短いと3年程度しかないこと。長くても10年と割り切った方が良いと思う。(施工当初は効果を発揮するが光沢が長期持続しない。)また、ウレタンそのものは比較的安全であるが、紫外線を防ぐ効果が弱いから(UVカットの効果がある液剤等)様々なものを配合したりする。よって、経験と知識豊富な信頼できる取扱業者に任せたい。予算重視ならば選択肢として良いと思う。(自然乾燥に2日~3日、完全硬化まで約1ヶ月要する。)

    少し割高になるが「シリコン」も一案。技術革新により、「UV」や「ガラス」が普及する前は「ウレタン」と共に主流だった。好き嫌いは分かれるが、「アクリル」と比べるとかなり光沢と厚み(高級感)が出る。アクリルほど弱くはないものの、耐久年数については明言しにくい。「UV」や「ガラス」に比べると塗膜のすり減りが早いからである。生活スタイルによっても差は出るが期待値は5年以上10年前後と言ったところだろうか。尚、興味本位で施工現場を覗いたことがあるのだが、溶剤の臭いがキツかった。勿論、シリコン樹脂に毒性はないし、硬化してしまえば臭気は無くなる。(自然乾燥に2日~3日要する。)

    同じ割高でも「シリコン」の光沢が好みでない人なら、適度なマット(ツヤ無し)感がある「ガラス」を検討すると良い。ナノコンポジットと呼ばれる技術によりフローリングに強固なガラス膜を形成する技法である。ただ、困ったことに滑る。だから、犬・猫を飼育するご家庭にはお勧めしない。犬なら股関節を痛めると思う。私も靴下で動き廻っていたら転倒しそうになった。(完全硬化まで2日前後要する。)

    「UV」の耐久年数は、少なくとも20年超、30年程度を期待して良い。塗布した樹脂に紫外線を照射して瞬時に硬化させるから施工後即入居可能。また、日光・水分(湿気)・アンモニア(ペットのオシッコ)・アルコール全てに強い。最大の特徴は「ピカピカ感」であるが、この光沢と皮膜の厚みを好まない人もいるから専門業者から施工例の写真・見本を見せて貰ってから依頼することをお勧めする。(過ぎたる光沢に後悔で表情が曇るお客様に出会ったこともある。)最も高額な初期費用になると思うが、耐久年数で割り戻せばコストパフォーマンスは高い。

    では、各技法の優劣を整理しよう。施工費の安さなら、①アクリル>②ウレタン>③シリコン≒④ガラス>⑤UVの順、耐久性年数なら、①UV>②ガラス>③シリコン≒④ウレタン>⑤アクリルの順、光沢(ピカピカ)感なら、①UV>②シリコン≒③ウレタン>④アクリル>⑤ガラスの順であり、ナチャラル感(=マット感)は光沢感の真逆となる。

    以上の基礎知識を持っていれば、アクリルコーティングを過度に安いと感じ、UVコーティングを過度に高く感じることは無くなると思う。転勤族は耐久年数よりも施工費の割安感を優先するだろうし、永住志向の人ならコストパフォーマンスに重きを置いてUVコーティングを選ぶのではないだろうか。また、ペットを家族として愛するご家庭なら「ガラスコーティング」は躊躇うはずである。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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