思うところ141.「底地は投資対象になる?」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

TOPコラム一覧

  • 思うところ141.「底地は投資対象になる?」




    <2023.2.15記>
    旧法・新法どちらに基づく借地権であっても 借地権者(=借地権付建物所有者)に対して敷地(=底地、そこち)を所有する人が底地権者である。ところが、法律家や我々不動産業に携わる者を除くと、日常生活で「底地権者」などと堅苦しい言い回しを用いる場面は殆ど無く、底地に限らず土地を所有する人を総称して「地主さん」と呼ぶ方が日本語として定着している。だから、地主さんが所有するその土地はあくまでも土地(地所)に過ぎないものと思われがちなのであって、それが底地という概念であることなど意識する機会も殆ど無いと思う。

    さて、その底地と称する特殊な権利形態の不動産について投資家が抱く素朴な疑問「底地は投資対象となるのか?」についてお答えしたい。結論から申し上げると答えは「YES!」である。しかしながら、親から底地権者としての地位を承継することになった地主さんならともかく、底地を買い求めてまで投資対象とするならば、底地・借地の本質を良く理解(勉強)したうえ、超長期的な投資スタンスで臨むことをお勧めする。また、上級者向けの投資対象と位置付けられるものであり、軽はずみな底地権の取得は慎むべきとも思う。

    仮の不動産に概算数値を当て嵌めて投資物件としての考え方のみを端的に述べたい。例えば、附着権利のない(借地権発生のない)単なる所有権の土地なら1億円が相場の商業地があったとしよう。東京都心部の商業系一等地ならば、借地権割合は80%が珍しくもない。つまり、税務上の見立てでは底地権価格は所有権価格の20%(2千万円)程度にしかならない。固定資産税・都市計画税が年額30万円賦課される土地だとしたら、地代は年額60万円~90万円程度だろう。とすれば、固都税を差し引いた年額30万円~60万円が手取り額になる。よって、仮に底地権を2千万円で取得できたとしても表面(単純)利回りは3%~4.5%、実質利回りは1.5%~3%(年額地代÷底地権取得価格)に過ぎない。

    ではなぜ低利回りにも拘らず投資の対象になると断言するのか。まず、通常(貸家)の不動産投資と違って空室リスクが無い。(稼働率100%が約束されたに等しい。)そして建物は借地権者の所有物であるのだから、それを維持管理のための費用も労力も要しない。また、一時金の魅力も大きい。度々あることではないが、借地権売買が成立すれば名義書換料(=名義変更料)として多額の一時金も入る。(一般論として売買代金の10%程度、8千万円の借地権売買なら8百万円程度が名義書換料)具体的な相場は伏せるが、借地権売買(名義書換)が無くとも建替時にも承諾料を請求できる。尚且つ借地契約の更新時期には相応の更新料も。安定収益に一時所得の可能性を勘案すれば低利回りと決めつけるのは間違いなのである。

    最も注目すべきは借地権買収の機会に恵まれる可能性があることだ。高値売却を模索する借地権者であっても売却先が底地権者ならば話は別、売主(借地権者)の名義書換料支払いが不要で直接取引なら双方に仲介手数料が掛からない。底地権者は経済的合理性のみに基づいて買値を提示すれば良く、売主(借地権者)が高値に拘るなら購入を見送って底地の保有を継続すれば良いだけのことである。もし、前述の借地権価格(8千万円)から名義書換料相当額(8百万円)と仲介手数料相当額(約2.7百万円)を値引き、借地権者が長年の恩義を感じて6千万円で譲ってくれたとしたら、底地権取得費用(2千万円)を足しても買収総額8千万円で所有権価格1億円の土地を所有できたことになる。建替時期・更新時期・相続発生時に借地権者の方から底地権者にその様な相談がされることが多い。

    逆も真なり。借地権者が望むなら底地権を借地権者に多少の高値で買い取って貰う手もある。借地権者は多少高値で買ったとしても所有権価格1億円の土地を手に入れることになり、その後の地代や各種承諾料支払いの心配が無くなる。要するに底地権売買も借地権売買も売主・買主双方に損の無いWIN-WINの関係を築き易いのである。

    残念ながら、一般投資家が底地権の売却情報を入手することは難しい。前述の通り、底地権者と借地権者の間で直接取引が成立してしまうことが多いからだ。また、当事者間の売買が成立しなくとも我々プロ(不動産会社)が瞬時に適正価格を算出し、一般投資家に先駆けて買い取ってしまうことも売却情報が世に出ない一因となっている。(底地・借地の買取り専門会社まである。)裏返せば、売却情報が長期間市場に晒されている売物であれば、それは借地権者も不動産会社も関心を示さない高値圏で放置されているか、又は取引を阻害する何らかの問題が発生している可能性がある。投資は詰まるところ自己責任、くれぐれも冷静なご判断を。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

オフィスランディックは中央区を中心とした住居・事務所・店舗の賃貸仲介をはじめ、管理、売買、リノベーションなど幅広く不動産サービスを提供しております。

茅場町・八丁堀の貸事務所・オフィス, 中央区の売買物件検索
PAGETOP