思うところ169.「普通」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ169.「普通」




    <2024.4.15記>
    普通」とは一体何を指して言うのだろう。読者の皆様は既にお気付きのことと思うが普通の人、普通の家庭は想像以上に少ない。コラム№153(役立つ性格分析)でも述べたが人格には何らかの偏りや裏表(二面性)があるのはごく自然なことであるし、他人には言えないような家庭の事情があっても恥ずべき事ではない。平々凡々の「普通の人」というのは我々が思い描く平均値を偶像化したに過ぎないのではないだろうか。私は仕事柄、長きに渡って守秘義務ある個人情報を沢山見聞きして来たが、全てにおいて完璧に平均値である人は(ほぼ)実在しないと感じている。

    家庭のあり方についても、TVアニメ「サザエさん」の磯野家や「ちびまる子ちゃん」のさくら家の様な二世帯が和気あいあいと同じ家に住まう大家族は今ではとても少ない。(=少なくとも普通ではなく珍しい方)1970年代(高度経済成長期あたり)から急速に進んだ核家族化は今尚進行中であり、核家族どころか結婚しないことを決めている人(独身主義者)も増えてる。女性が男性を頼らずに自立でき、家制度に縛られることが少ない世の中になった影響もあるのだとは思うが、今や日本の離婚率は35%前後だ。つまり、身の回りで3組に1組が離婚したとしても確率論においては普通のことであって驚くべき事ではないということになる。因みに厚生労働省発表の令和4年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は過去最低の1.26と日本政府の目標値1.8を大きく下回る。コロナ禍の影響があったにせよ、そもそも目標値そのものが人口を維持するために必要な2.06~2.07を下回っており、1.26が普通である限りは人口減・少子高齢化の更なる進行は避けられない。その現象の一つとして独居老人が増えて孤独死も多発傾向にある。もし、日本が経済大国の地位を死守しようとするならば、いずれ否応なく移民政策への転換(現在は建前上「特定技能在留資格」導入にて外国人を受入れる非移民政策)の是非が活発に議論されることになるだろう。

    さて、普通の家(初めての持ち家)とは?令和5年9月の国税庁発表の日本人(正社員ベース)の平均年収は約458万円。年収の5倍が適正範囲内の購入予算と仮定すれば、全国平均では2,300万円程度の家が初めて取得するに相応しいことになる。(実際には住宅ローンの超低金利の追い風や親の資金援助等があって普通の家はもう少し上の価格帯になっていると思う。)令和4年7月に厚生労働省から発表された国民生活基礎調査の結果に基づく平均的な世帯あたりの人数は2.25人だから、その価格帯なら広さは60㎡~70㎡、間取りは2LDKか3LDKが初めての持ち家としての普通とイメージできる。勿論、地域毎に物価や平均年収、ライフスタイルさえも大きく異なるから単なる全国の平均値を求めてもあまり意味が無い。過疎化に苦しみながらも敷地60坪以上で庭付であるのは勿論のこと、敷地内に駐車場が2台分以上確保された一戸建にゆったりと住まうのが普通の片田舎は沢山ある。当社の主要営業エリアである東京都中央区は対照的なミッドタウンであり、23区で3番目に小さな面積(10.21平方キロメートル、ゴルフ場なら7つ程度に過ぎない。)でありながらも本年2月1日時点(中央区発表)で総世帯数101,564、総人口178,061人が住まう。世帯あたりの人数は1.75人、総務省発表の中央区在住者の令和4年の平均年収は約760万円であるから、働き盛りの単身者とディンクス(=DINKs、ダブルインカムノーキッズ=子供を持たない共働き夫婦)が比較的多いことが数字から読み取れる。それでも年収の5倍は約3,800万円。当エリアのファミリータイプを4,000万円以内の予算では普通の人が普通のものを普通には買えない。1億円超するタワーマンション等の高額価格帯の市場を動かしているのは年収1,500万円超の高額所得者やパワーカップル(共に高収入を得ている共働き夫婦)、その他は外国人投資家(主に中国勢)といった人達であり、その限られた富裕層が低金利や円安・株高等を追い風にいとも簡単に超高額物件を売り買いする大相場を演じている。

    日本人の平均寿命については本年初回のコラムで述べた通り、世界194ヶ国と地域が加盟する世界保健機関(WHO)の発表では令和4年時点で84.3歳、長寿国ランキングで堂々の世界第1位である。だが、84.3歳が普通(寿命)と言われてもやや違和感があって実際には60代が若手と言われる長寿コミュニティの存在は良く耳にする。要するに不幸にも若くして亡くなった方との平均値に過ぎない。日本人の平均寿命は実質100歳が普通となる日が近いのかもしれない。

    これは耳障りな情報になるが平成10年から14年連続して自殺者が3万人を超えていたという。(その時期は日本のデフレ不況期と完全に一致)そして今も年間2万人を超える人が自ら命を絶っている。この数値は主要先進国7ヶ国で自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は最も高いから普通ではないし、普通であってはならない。

    この紙面では語り尽くせぬが普通に生きることは思いの外難しい。普通でないのが普通でありながら、自然体で普通であり続けるのは難しいのである。それら言葉のパラドックスは矛盾するようでいて矛盾しない。なぜなら我々が普通だと思い込んでいるのはイメージに過ぎないから。まさに「人生色々」、己が全くの凡人であることを素直に認めつつ、私もまた普通の人ではないように思う。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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