思うところ204.「手紙」 | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ204.「手紙」





    <2025.10.1記>
    先日、入居者の親御さんから契約更新手続きに係る心温まる一通の礼状が当社に届いた。古式ゆかしく二枚目に白紙の便箋が添えられた気品溢れるそのお手紙は心からの謝意を告げるものであり、当社の仕事が正当に評価されていることの証でもあって素直に嬉しかった。時を同じくしてその部屋の大家さんからも日頃の賃貸管理業務について労いのお言葉を頂戴して尚更に嬉しかった。双方にご満足頂いてこそ初めて三方良し、Win-Winの関係を築くことができたと言えよう。

    不動産業、特に賃貸管理業務に携わっていると舞台裏では人知れぬ面倒な雑務がとても多いのだが、飲食店舗で良く見かける掲示物「レビュー(評価)を宜しく!」といった軽いノリで仕事の評価を顧客に催促するつもりなど毛頭無い。真の評価はインターネット上に氾濫する偽りの賛辞よりも顧客の継続取引という歴然たる成果となって業績に表れる。15年前の今頃、まさにこの時期(平成22年10月)に当社を設立して以来、有難いことに成約顧客(リピーター)とその方々の紹介(推薦)によって不動産に係る多種多様なご用命(売る、買う、貸す、借りる、直す)が年々増え続け、今では広告宣伝を強化しなくとも年間通じて繁忙期であると言っても過言ではない。

    私がインターネット戦略を重視しつつも成約顧客にレビュー(評価)をお願いしないのは、苦言お叱りは甘んじて受けねばならないとしても、こと賛辞についてはお願いして手に入れられる性質のものでないと思うし、「いざ、鎌倉(№23)」の心意気で普段は目立たなくて良いと考えているからだ。それに真のファインプレー(コラム№2)は上辺だけで分かるものではないと思っている。「アヒルの水掻き(コラム№71)」のごとく水面下で藻掻き続けることを心掛け、難しいことでも涼しい顔で臨みたいと思う。頻繁に職業的なインフルエンサーやコラムニストの売り込みもあるが全てお断りしている。報酬を得て意図的に企業の評判を底上げするのはステマ(ステルスマーケティング)に他ならないと思うのだ。ステマの悪用が想像以上に蔓延している政界のようになって欲しくはない。

    さて、我々の立場でお客様を評価するのは筋違いであって甚だ烏滸がましいことではあるのだが、先頃ある若者(以下「Aさん」)の退去に立ち会って清々しい気持ちになったことをご報告しておきたい。その日(退去日)、Aさんは荷物の搬出が終わり、妻子が待つ新居へと引越トラックが出発したにも拘らず黙々と掃除を続けていた。私が「もう十分に綺麗ですよ。それに綺麗でも、そうでなくても清掃費の負担額(特約を付して退去時に借主全額負担)はほぼ変わりませんから。」直後、それが恥ずべき発言であったことを思い知らされる。

    「いえいえ、そういう事じゃなくてこのに愛着があるんです。世話になったのだから最後はピカピカにしてあげたいんです!」家に対する深い感謝の念からだろう、彼は無意識の内に部屋を擬人化して私に語っていた。Aさんご一家にとっては新婚時代を楽しく過ごして子宝にも恵まれた幸運な住処。家族が増えて手狭になったと謂えども大切な思い出の詰まった愛しい我が家だったのである。「楽しかったなぁ、ずっと此処に住んでいたかった・・・。」しみじみと語るその言葉には彼の家に対する純粋な愛情が満ち溢れていた。Aさんの見事なまでの「立つ鳥跡を濁さず」の立ち居振る舞いは私に失言の反省を促す程心に響くものがあったのである。

    前回のコラム(№203「温度差」)では、業界人ならではの板挟みの苦しさがあって日々軋轢に晒されていることを吐露したが、ひたむきに一所懸命仕事していると人の優しさや誠実さに触れる機会も多い。善と悪とまでは言わないが光あるところには影があって、影あるところには光がある。そう、我々は温度差ばかりでなく陰陽の狭間でも仕事しているのである。幸いにも当社には真贋を見極めることのできる、一隅を照らすことのできる、そういう心眼をお持ちの善良なる顧客が多い。その光にとても励まされる。だから頑張れる。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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