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  • 思うところ151.「強制執行」




    <2023.7.12記>
    テレビ朝日新ドラマ「シッコウ!!~と私と執行官~」が7月4日(火)より放映されている。私は偶々第1話と第2話を見たに過ぎないのだが、家賃の長期滞納による強制執行の場面があったので職業病的に関心を持った。刑事や弁護士が主人公の勧善懲悪をテーマにした人気ドラマは数多くあるが、(平穏無事に暮らす限りにおいてお会いする機会も無いお役人であるし、)時として言われ無き恨みを買うことさえある執行官を主役に据えるのはとても珍しい。主演は伊藤沙莉さん(執行官の補助者役)、代表作「踊る大捜査線」で「事件は現場で起きているんだぁ!」と叫んだ織田裕二さん(最近は世界陸上のメインキャスターのイメージ)が執行官役を演じる。

    賃貸人には「家賃を貰う」権利があって「を提供(貸す)」義務がある。賃借人には「家賃を支払う」義務があって「家に住む(使う)」権利がある。この関係が大きく崩れる時、つまり長期間家賃を滞納して住み続けると、やむなく賃貸人が法的手段に打って出て、最終的(訴訟提起から概ね5ヶ月程度)には強制退去(強制執行)ということになりかねないことはご存じの通り。私は「長期(滞納)とは?」と問われた時、「3ヶ月以上」と判例に基づく一般論で回答している。要するに家賃滞納発生、直ちに強制退去ということにはならない。

    当社は賃貸管理業務委託契約に従って家賃の督促業務を粛々と行なうが立退き交渉はできない。「貴方ならその位の交渉簡単でしょ。」などと賃貸管理業務と混同する家主(賃貸人)もいらっしゃるのだが、弁護士資格を持たない我々が業として(報酬を得る目的で)立退き交渉を行なえば、弁護士法第72条の定めに抵触して罪に問われ、所謂「非弁行為」になってしまう。

    また、当事者である賃貸人と謂えども、賃借人の部屋に賃借人の承諾無く入室して室内の物品を売却・廃棄処分をしたり、賃借人が入室できないよう勝手に鍵を交換したりすることはできない。民法上の「自力救済禁止の原則」である。自己の権利を侵害されたとしても、法律の手続きを取らずに実力行使で権利を実現しようとすれば不法行為となってしまう可能性が高い。それどころか賃貸人・賃貸管理会社であっても無断入室は刑法(不法侵入罪)に問われかねないし、家財を勝手に処分すれば窃盗罪、壊せば器物損壊罪に問われてしまう。

    幸いにも当社が行なう家賃の督促業務の頻度は低い。それでも心労が伴うのである。ましてや強制退去(強制執行)ともなれば、職務を遂行する執行官の精神的負担は計り知れないものである。今日も何処かの現場で退去する人から罵詈雑言を浴びているかもしれない。我々は苛烈な状況の現場を知らないだけなのである。(事件は現場で起きている!)家賃保証会社の督促部隊が防刃チョッキを着て家賃滞納者宅を訪問するのも大袈裟とは言えないだろう。

    賃貸人の立場も擁護しておきたい。左団扇の家主(賃貸人)ばかりではないことを是非理解して欲しい。多くの投資家が金融機関から借入れをして不動産を取得している。家は貸しているがお金は借りているのである。返済の原資となる家賃が入らなければ返済が滞ってしまう人もいる。無収入であっても区分所有マンションなら共益費も支払わなければならないし、不動産を所有する限り相応の固定資産税・都市計画税の納付義務もある。

    多くの個人投資家はレバレッジ経営を信奉して大きなリスクを背負っている。裁判所が言うところの「長期」が妥当か否かはともかく、家賃の入金を一日千秋の思いで待ち侘びる人もいる現実を軽んじてはいけない。権利と義務のバランスを崩して負の連鎖を生み出してはならないのである。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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