
<2026.1.5記>
謹賀新年。本日が令和八年(2026年)の仕事始めになる。和暦の「八」は字体が末広がりでとても縁起が良い。干支の組合せでは43番目、60年に一度の丙午(ひのえうま)の年にあたる。60年前の丙午の年(1966年)は良からぬ迷信(丙午に生まれた女性は気性が荒く夫の寿命を縮める→嫁の貰い手が無くなる)の悪影響で子供の産み控え現象が起きたという。丙午生まれの女性の名誉のためにも私が代弁をしておこう!そんなものは男尊女卑の黒歴史の中に生まれた全くのデマである。陰陽五行において十干(じっかん)の丙(ひのえ)は陽の火、十二支(じゅうにし)の午(うま)も陽の火である。共に火性の比和(=ひわ、同じ「気」が重なると良くも悪くも傾向が強くなること)であることから四柱推命においては丙午生まれの人を情熱的な人柄とあまりにも決めつけがち。
だが、それは荒唐無稽な迷信だと言わざるを得ない。私を疑うならメンデルの法則(交配実験によって証明された遺伝子理論)を今一度勉強した方が良い。そもそも同い年の女性が十把一絡げで気性の荒い人であるはずがない。おそらく江戸時代の演劇(浄瑠璃や歌舞伎)の脚本(例:江戸時代のある放火事件を題材にした悲劇「八百屋お七」)で話を盛り上げる為に脚色された部分が巷で評判となり、いつの間にやら一人歩きして定説に、やがて迷信へと変化を遂げたとする説が的を射ているだろう。およそ流言飛語などというものは所詮その程度の噂に端を発するものなのだ。そう分かりきっていながらも少子化問題に頭を抱える現代社会にとってSNSによる風説の流布が怖い。
さて、「八」と言えば中国語の「発」の発音と似ていることから言葉で縁起を担ぐ中国人が最も好む数字でもある。親しい中国人に聞いたところによると「発」は「発財(金持ちになる)」、「発展」を連想させる縁起の良い漢字らしい。だから8のゾロ目ともなれば金銭的価値さえも生まれることだろう。得難い8888の№プレートの高級車や携帯電話の持主はかなりの確率で中国人富裕層だと思う。そう考えると不動産も部屋番号に8が付く方が売れる気がする。いや、その方がきっと売れる。因みに日本人は7・5・3を好む傾向がある。(ラッキー「7」は米国大リーグのジンクスの影響)私の会社員時代を振り返っても新築マンションの販売状況を分析する限り4や9の付く部屋よりも7・5・3が付された部屋の方から先に売れた記憶がある。部屋番号に4の付く住戸は「四」の読み(Si )が「死」、9が付く住戸は「九」の読み(ku)が「苦」を連想するから無意識のうちに避けてしまうらしい。特に4が敬遠される傾向は明白であり、アパートなら103号室の隣戸の部屋番号が105号室だったり、パチンコ・スロット台なら123番の横の台が125番だったりする。4を除外して縁起を担ぐ経営者は多い。経営者がそう思わなくても顧客心理を踏まえてそうせざるを得ないのだろう。
仕事始めだからと言って過ぎたる縁起担ぎの話はさておき不動産関連に話を戻そう。外国人が好む住処と言えば何といっても湾岸エリアのタワーマンションである。当社の営業エリア(東京都中央区)で中国人富裕層のマンション爆買いはご存じの通り。先頃、やや耳の遠いお爺さん(80代後半の方)に「お宅はどんな不動産会社なの?」と聞かれて「端的に言うと『中央区専門』ですね。」と答えたら、「そうなの、『中国専門』なの、うん、うん、今中国のお金持ちがマンションを沢山買うんだってねぇ。」と言われ、私は己の滑舌の悪さを恥ながらお爺さんの耳元で「チュ・ウ・オウ・クです!」と少し声を大きくして言い直した。ところが、管理台帳を捲ってみると昨年は当社の売買取扱い実績の半数近くが中国人富裕層の取引となっている。結果的にはお爺さんの聞き間違いが当たらずとも遠からずの年であったということだ。また、ふと気が付けば耳こそ遠くはないものの、還暦を過ぎたる我が身なのだから、「そう言う貴方もお爺さんだろ?」と言われても致し方ない歳になっている。
閑話休題、その(東京都)中央区のタワーマンションは近年の物価上昇率では説明がつかない程に値上りしている。不動産会社としては喜ぶべき事かもしれないがこれ程までに高値圏にあると老婆心ながら取引後の相場が心配になることもある。(私が不動産価格の乱高下を望まないのはコラム№97で述べた通り。)確かに超長期住宅融資(最長借入期間:50年)の登場で若者が高額物件の取得にチャレンジ(?)し易くなった。高額世帯年収のパワーカップルであればペアローンで多額の借入れも可能である。為替の影響もあってなのか外国人投資家はまだまだ安い買い物だと宣う。やや過熱感を感じつつも「デフレ」と「インフレ」両方の怖さを知る世代としては「持つリスク」も「持たざるリスク」も実際に見てきたわけで「売り時」、「買い時」の絶対的なアドバイスは慎むべきと思っている。そうかと言って「神のみぞ知る」などと無責任な言い逃れをするつもりは毛頭無いのだが・・・。
旧約聖書(創世記)に登場するバベルの塔は天に届く塔を建てようとした人間の欲望や傲慢の象徴である。因みに中央区のタワーマンションは最高でも58階建だからせいぜい200m程度。それでもTHE TOKYO TOWERSの西向き最上階付近の住人は今年(10月24日)再開される東京湾華火大祭で空高く打ち上がる花火の煌めきを(玉尺)10号玉は見上げるにしても3号玉までならバルコニーから見下ろす、4号玉でも横目に眺めることはできるだろう。今後の発売物件も現行法においては物理的に天空まで大幅に伸びるはずはないのだが、その市場価格も青天井と言う訳にはいかない。あくまでも適正範囲内の取引であって欲しい。我々は立場上、取引価格を需要と供給のバランスに委ねる外ないのだが、「Japan as №1」と日本中が浮かれたバブル経済を体験した者として取引対象がバベルの塔ならぬ「バブルの塔」であってはならないと思っている。無論、砂上の楼閣のように脆弱なものであってはならないし、蜃気楼のように実体の無いものであってもならない。売主様も買主様も、貸主様も借主様も、ご縁ある皆々様にとってWin-Winの良い年にならんことを心から願っている。

このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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