
<2026.10.13記>
真のファインプレーは見えない(気付かれない)もの。誰にでも認識できるナイスプレーや目立たんが為のスタンドプレーと明確に区別すべきである、そうコラム№2(ファインプレー)で述べた。(此処で言うところの「プレー」は「営業」と読み替えて頂きたい。)よって、本コラムはその後編にあたる。
良い営業結果なら、「ナイスプレー(Good job!)」の方が適する言葉だと思う。また、どんなに良い営業結果であろうとも、そのプレーの根底に過剰な承認欲求があるならば「スタンドプレー」である可能性を疑わざるを得ない。いずれにせよ、誰にでも認識できる好プレーなら「ファインプレー」と賞賛するには及ばない。とすれば、「ファインプレー」とは実に孤独なもの。事件・事故を未然に防ぐ為にする言動なら超ファインプレーに値すると思うのだが、事件・事故が未然に防がれてその活躍が表面化することがないとすれば誰からも評価されないことを覚悟せねばならない。ところが、仕事である以上は評価されなければ意味が無い。だから理解して貰う為に説明する。その瞬間、ファインプレーはスタンドプレーに成り下がってしまう気がしてならない。そう思って説明せずにやり過ごす時の虚しさを「孤独なもの」と表現した。
自画自賛と言われかねないがコラム№160(回顧録Ⅱ)で紹介した奇跡の即日完売プロジェクトはファインプレーに近いナイスプレーだったように思う。ところが、真のファインプレーはコラム№161(回顧録Ⅲ)で述懐した己の立場を危うくしかねなかった無断出勤の方である。その新築分譲プロジェクトは先着順受付方式だった為、購入希望住戸の商談順位を確保したいお客様が真冬(当時の12月は今よりも寒かった。)にも拘らず前日夜間のうちに販売事務所前に数人が並び始めてしまった時の出来事である。当時の不動産市況下における集客難からしてありえない不測の事態だった。
粉雪がチラつく極寒のあの日、まるで我慢大会かのように寒風吹きすさぶ中で凍えるお客様を私は見て見ぬふりするわけにもいかず、社内規則に反するも泊まり込みを決意して独断で現場に舞い戻ったからこそ急病人を出さずに済んだのだと思う。携帯電話が普及していなかった当時の深夜では独断的行動もやむを得なかったのだが、仮に上司に連絡がついたとしても指示を仰げば「関わるな!(≒前日から受付けたと揉める)」との建前論がより事態を難しくしたと思う。だが、普段の通常業務ならともかく、こと人命に関わるような危機管理は社内規則に拘るよりも臨機応変、即断即決、柔軟な思考を以て現場責任者が腹を括って判断しなければならないこともある。2011年の東日本大震災の不幸を思い出して欲しい。指示通り避難所に向かった沢山の人が津波に呑み込まれて助からなかったではないか。天災地変や想定外の事件・事故はステレオタイプのマニュアルやルールが絶対的ではない、時には通用しないことを物語っている。
また、見方によって好評・不評が真逆の結果になってしまうこともある。例えば、コラム№132(アドバイス)では、「夏場に空室の中古マンションを案内する時は、現地に少し(20~30分程度)先回りして販売住戸の冷房を効かしておくと良い。」と若手営業マンに向けてアドバイスしたが、そのホスピタリティが理解できない売主であれば、「電気代の無駄遣いじゃないか!」と怒られかねない。数十円単位の微々たる経費に拘るよりも早期好条件の契約を目指した方が得策であるのは事実だが、「当り前のこと、説明するまでもない。」などと無神経に実行してはならない。誤解されることも予見して事前にコンセンサスを形成しておくことの方が説明するまでもない営業マンの心配りというものである。
苦言(コラム№98参照)や信念に基づく不作為がファインプレーになることもある。バブル経済の余韻が残る当時(平成初期)、売主(業者)・上司に言われるがままに私が無責任な販売促進資料(私には荒唐無稽に思えた賃料も土地値も一直線に右肩上がり、稼働率ほぼ100%の収支計算表)を安易にばらまいていたら、その後長引いたデフレ不況で仲介人の助言を信じた顧客がどうなっていたものか。債務超過に陥った顧客から社の販売責任を問われることになっていたかも知れない。旧態依然とした年功序列の大組織の中にあっても上席の者に臆さず毅然と物申さねばならない時もある。盲目的服従はその場しのぎに過ぎず、結局のところは我が身を滅ぼしかねない。BM事件(コラム№154参照)は腐敗した組織の典型的な例だろう。
ナイスプレーが巡り巡ってファインプレーになることもある。コラム№71(袋地・前編)に登場する販売物件の近隣にお住まいだったその人を「どうせ買えない人」と見下して参考見学すら提案せずに横柄な態度で対応していたなら、私は古巣(S販社)にアンチを増やしてしまったかもしれない。良くも悪しくも情報は伝播する。積極的に将来含みの参考見学を受け入れて信義誠実が伝わったからこそ後にご家族の皆様がS販社ファンに、その周りの人たち、更にその周りの人達がS販社に対して好印象を持ってくれたとすれば、そのナイスプレーが本人も知らぬ間に企業価値を高めるファインプレーに変化したという見方ができなくもない。
誤解無きよう改めて申し上げておく。其処(コラム№71)で述べた通り、理想とする営業姿勢を「難局にあっても水面下で藻掻きながら何食わぬ顔で湖面を進む『アヒルの水掻き』のごとく」と考えてはいるものの、私は「ファインプレー」を特段推奨しているわけではない。それは自然体、かつ無意識の内に生み出されるべきものだと思うからだ。ファインプレーはナイスプレーやスタンドプレーとは全く次元が異なるものだと申し上げているだけである。会社組織に属するならば自身の功績に対する説明能力も問われていることをお忘れ無く。上司は全知全能の神様ではないのである。同様にお客様も神様ではない。自分の思いが伝わらない、営業努力が報われないと拗ねるのは筋違いというものである。
さはさりながら、人知れず弛まぬ努力と心配りをする人、その言動の本質を見抜く慧眼をお持ちの人、どちらの傑人も唯々尊敬するばかりである。

このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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