思うところ171.「色は色々」 | 東京駅・茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ171.「色は色々」




    <2024.5.15記>
    リノベーション事業(中古住宅の再生再販事業)に携わる者は、限られた予算内で最も適する設備・仕様の選択をすることや暮らし易い空間デザイン企画力が求められるだけでなく優れた色彩感覚も必要とされる。勿論、有能な建築士やデザイナーといった人材・人脈に恵まれている事業者は全てを分業しても良いと思う。また、色味だけが悩みなら色の専門家(民間資格の例:東京商工会議所認定「カラーコーディネーター」)に相談するも良し。それら人件費のコストアップはVE(Value Engineering=設計・工法について機能を低下させることなくコスト削減を模索する代替案)の提案能力に磨きを掛ければ良いだろう。いずれにせよ審美眼は必要であるので審美眼無き事業者は無理をせず金主(スポンサー)に徹すべし、と言わざるを得ない。

    随分昔(創業して間もない頃)のこと、再生再販物件のリフォーム完了に伴うお披露目会(OPENルーム)を同マンション内の居住者向けに開催した時の出来事だ。(当時は販売目的の他、市場のトレンドを把握するためにもOPENルームを頻繁に行なっていた。)ふらりと現れたご見学者の一人(80代半ばの男性)に私が内装に関して色味の評価をあれこれ尋ねるうちに「(トイレの便器の色は、)もう少し生成(きなり)色の方が良いなぁ。」と回答されて返す言葉に一瞬窮してしまった。「生成色?どんな色だろう・・・。」己の無知を恥じるよりもその色名を「昔の言葉」扱いして世代の違いを感じさせるわけにはいかないと慮っての戸惑いだった。

    帰社してすぐに「生成色」を調べたところ実に微妙で奥深い色と判明。本来の意味は「漂白・染色する前の素材そのものの色」である。「やや黄色がかかった白」とのことなので「アイボリー」や「オフホワイト」をイメージしたのだが正確にはどうも違うらしい。カラーコード(Webページ上で表現される色を指定する為の制御コード)は「#fbfa5」、英語圏・フランス語圏では「Ecru(エクリュ)カラー」と称するのが一般的のようだ。実は「生成色」自体は昭和に入ってから使うようになった比較的新しい色名であり、日本古来の色名を当て嵌めるなら、「白和幣(しらにぎて)」、「木綿髪(ゆうがみ)」、「鳥の子色」、「卯(う)の花色」といった色名が現代の「生成色」に近いそうである。そんな色名があること自体をその時初めて知った。

    要するにそのご年配の見学者は「冷たい感じの白(クールホワイト)よりも温かい感じのする自然な白が良い。」と言いたかったわけである。それについては私も同感だった。実はそのトイレ便器、当社の工事責任者(一人親方)が品番を間違えて誤発注した商品であった。それを工期の都合上仕方なく容認したものだったのである。家は美術品ではないから、あまりにも奇抜な配色は好き嫌いが分れる。購入者も入居者も未定のまま販売する再生再販事業においては過度に個性的な商品企画はマッチングが難しく早期成約の障害となりかねない。冒険心や遊び心も大切だが稼働率が優先される投資用(賃貸用)物件においては尚更のことである。ベーシック&ナチュラルカラーの生成色なら年齢・性別を問わず好まれて飽きも来ない。個性的な建具・家具・家電の色味とも馴染むのである。また、「膨張色」の白を基調とした内装には部屋をより広く、より明るく見せる効果が期待できる。よって、狭小住宅や北向きの部屋に適す色と言えるだろう。

    シックな高級感を求める時は反対に「収縮色」の黒系で纏めるのが無難。空間が引き締まって重厚感を醸し出すことができる。だから書斎などの内装色に適すると思う。夏場になって洗面室などに涼しさを演出したいなら「寒色系」を採用すれば良い。寒色系の色とは青・水色・青緑などである。ダイニングスペースなど温かみを欲する空間なら対照的な「暖色系」が良い。その暖色系の赤・オレンジ・黄色などは暖色系であると同時に膨張色でもあるので空間に広がりも出る。その上で照明を白熱色(電球色)にすれば料理が美味しく映えるに違いない。(私と同世代なら小学生の頃に「美味しく見える照明の色」を「家庭科」の授業で習ったはずだ。)ついでの講釈を垂れるが一概に青と言っても藍色(濃い青)なら収縮色、水色(淡い青)なら膨張色である。緑や紫はどちらにも属さない「中間色」、その他にも「進出色」と「後退色」という分類まであるからもう少し掘り下げて色の研究をしてみると面白いと思う。

    それぞれの色にバリエーションがあるのは誰もが知る常識。我々はその色味の的確な呼称を知らないだけなのである。例えば赤にも白に劣らない数の様々な色味がある。我々不動産業界の広告担当者が最も強調したい箇所や文字で多用するのが「金赤(きんあか)」である。ところがこの金赤なる色名はWebデザイン主流の現在では通用しなくなりつつある。紙媒体が主流の時代なら広告担当者には説明するまでも無い色名であったのだが・・・。因みに私が好む金赤は、色の三原色CMY(シアン・マゼンタ・イエロー)で表記するとMY100%(マゼンタ100%・イエロー100%)なのだが、印刷屋さんによってはM90%/Y100%の朱色がかったものを金赤と称している。

    よくよく考えれば還暦間近の私が今時の小学生に「肌色」と言っても意図する色は通じないだろう。理解して貰えないどころか肌の色は人それぞれなのだから差別用語だと非難されかねない。どうやら「ペールオレンジ」とか「うすだいだい」と言わねばならないようである。色は実に色々、好みも十人十色。しかも「流行(はやり)」という名の魔物は我々の予想を超えて足早に過ぎ去っていくのである。

     


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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