
<2026.7.1記>
不動産業界に限ったことではないが事業年度の最終月を3月とする会社が圧倒的に多い。コラム№216(発想の転換)でも私はそう述べている。しかしながら、当社(2010年10月設立)は顧問税理士の繁忙期に配慮して7月を決算月とした少数派である。だから、当社にとっての7月の異称(和風の月名)は文月と言うよりも締月(〆月)、まさに今月31日に第16期決算最終日を迎える。個人の生活リズムに照らせば本来は年の瀬(異称:師走)に該当する気忙しい時だろう。ところが、私が仕事で走り回るのは年間通じてのことなので決算月と言っても日常に何ら変化は無い。お陰様で業績については顧問税理士から例年お褒めの言葉を頂戴している。
決算月は経営者として今期業績の落着を見極め、中長期的な視野で来期の経営戦略を熟考すべき大切な節目である。それにも拘らず、7月に入って夏本番、猛暑日が続くようになると目先気になるのは管理物件のエアコン故障(コラム№178参照)のことだ。「少々スケール感に欠ける心配事では?」と揶揄されても致し方ないだろう。だが、自らが望んでプレイングマネージャーの立場に身を置く私からしてみれば、「そんな小さな事」と矮小化されるのは甚だ心外であり、私にとっては大事である。
私の憂慮に巷で騒がれる「2027年問題」が拍車をかける。空調設備に限った狭義の2027年問題は、来年度から適用される省エネ基準の引き上げによって安価な旧型モデルの販売が終了、新型モデルのエアコンは製造コストアップと交換工事の集中によって価格が高騰するというもの。(現在は中東情勢に端を発する原油高とナフサ不足、その他円安の影響も大きい。)その前段として駆け込み需要による市場の混乱、電気工事業者の人手不足、冷媒ガスの供給不足等々もその問題に含まれる。
確かにエアコン交換を安価な旧型モデルで済ませようとすれば今年がラストチャンスになる。但し、既に交換時期が到来しているならば、の話である。概ね使用期間10年前後あたりが交換すべきかを迷う分岐点になるのではなかろうか。使用期間が15年超なら迷わず故障前に交換する(=トラブルを未然に防ぐ)方が賢明な判断だと思う。故障し易い時期(真夏・真冬)の修理・交換は思いの外に時間を要するし、故障してから至急扱いで発注すると割高になりかねない。それに省エネ基準がより厳しくなるということは新型モデルに交換すると電気代は割安になるということでもあるのだからプラス面も大きいはずだ。何より地球環境保全の為にもその利点の方に重きを置いて貰いたい。勿論、エアコンの寿命と今後の電気使用料金の変動にもよるだろうが新型の使用期間10年超で削減される電気代を積算して比較検証をしたらコストパフォーマンス(費用対効果)は悪くないはずである。しかも、賃貸用不動産の設備としての交換ならば、「省エネ新基準適合の新品エアコン備付!」とセールスポイントとして謳えば、昨今の生活費の高騰に悩む入居者にとっては決め手の材料となるに違いない。
広義の2027年問題は多岐に渡る。その内の一つが照明器具の是正義務(LED化)である。2027年には蛍光灯の製造と輸出入が全面的に禁止となることはコラム№196(LDE照明)でも述べた。LED照明への交換の駆け込み工事が集中すれば需要と供給のバランスが崩れて一層の品不足と値上げ問題に発展しかねない。そればかりか工事請負業者が見つからないという懸念もある。この問題の本質はまさにエアコン問題と酷似している。蛍光灯は即ち旧型モデル、LED照明は即ち新型モデルのエアコンに該当するということ。価格高騰も工事請負業者の人手不足もとても良く似た現象だ。また、節電効果が期待できてSDGs(=Sustainable Development Goals、2030年迄に持続可能でより良い世界を目指す国際目標)を目的とする点も同じである。だが、エアコンは新型でも寿命が然程変わらないのに比べてLED照明の寿命は約10年へと飛躍的に延びる。暫くの間は蛍光灯の在庫があると思うが遅かれ早かれ商品が市場から消えてしまうのだからこちらは躊躇せずに交換した方が良いだろう。
その他にも2027年は問題山積。昨年1月に埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故はこれから表面化するであろう公共下水道の老朽化問題(限界説)を象徴する不幸な出来事であり、不気味な予兆とも言えるだろう。更新時期を迎える高速道路や橋梁の多さも、深刻な物流人手不足も懸念される。因みに過度な節税を抑止する為に2027年1月1日以後の相続・贈与は貸付用不動産の評価方法が見直しとなる。その税制改正も仕事上は逆風となる不動産業界にとって2027年問題の内と私は見ている。食品関連の消費税減税も喜んでばかりはいられない。事業者にはレジシステム改修等で経費の負担が重くのし掛かるし、4兆円規模の税収不足の代替財源も気になるところだ。他で増税を模索するのか?それとも赤字国債の発行で次世代にツケを回すのか?
必要な改善・改革を「問題」と称するのは少々語弊があるかも知れないが、2027年に集中する同時多発的な諸問題を甘く見てはいけない。我々は皆、いつ如何なる時も迫り来る危機・困難・試練に対して敢然と立ち向かわねばならないのである。

このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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