思うところ197.「峠の茶屋の経済学」 | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ197.「峠の茶屋の経済学」




    <2025.6.14記>
    さて、峠の茶屋で市場価格の2倍で売られている飲料を買うことになった時、貴方ならその値付けに対してどう感じるだろうか。観光地価格と割り切る?それとも次回はより多くの重荷を背負うことを決意する?はたまた高値に強い憤りを感じる?質問の意図を気にせずに自問自答してみて欲しい。その本音を聞けば経営者や投資家としての資質が朧気ながら分かる気がする。

    もし、食料や燃料の仕入れを歩荷(ぼっか=人力頼みの物資運搬方法)に頼る悪路の休憩所(山小屋)での倍価格ならむしろ安過ぎるかもしれない。更なる高地で窮地に陥った緊急時の水分補給ならプライスレスと考えて購入できたこと自体に感謝すべきだろう。私ならそんな価格設定では採算が合わないだろうと余計な心配をするかもしれない。と同時に「ドローンで運べないかな?」などとコストダウンの余地を無意識のうちに模索すると思う。そう、闇雲に「高値」と決めつけるのではなく、危険性や重労働に対して正当な報酬を加算した上でその多寡を問うべきであり、できるものなら改善・改良すれば良いのである。

    私は同じ倍価格でも時と場所、総合的判断で高値に感じることもあれば安値に感じることもある。因みに仲間内でゴルフをする時は手前のコンビニに立寄って少し多めに飲料を買ってからゴルフ場に入る。(夏場は凍らせたペットボトルタイプのものを3分の1程度の割合で買うことをお勧めしたい。そうすればその冷却効果が持続してラウンドの前半・後半どちらも程良い冷たさで飲むことができる!)なぜなら、昔と違ってゴルフ場内の売店は無人販売(自動販売機)であるのに同じ商品が目と鼻の先の距離にあるコンビニ店の1.5倍以上の価格設定だからだ。遊びと謂えども浪費はすべきではない。そう言っておきながらもゴルフ場の利益追求姿勢も十分に理解できる。だから見苦しくない程度の紳士的な節約で創意工夫をしたら良いと思う。

    これは見苦しい事例。その昔、給水栓パッキンの経年劣化に伴う漏水事故に駆けつけた水道工務店の作業員を頭ごなしに罵倒した人がいる。今風に言えば「カスハラ」である。「ふざけるな!七千円?パッキン1個なんて百円もしないだろう!」だが、冷静に考えて欲しい。他の修理と抱き合わせの依頼ならともかく、パッキン交換だけの修理を夜分に緊急出動要請すれば割高になるのも致し方ないし、人件費の他に交通費・駐車場代、フランチャイズ店ならロイヤリティ(本部に支払うマージン)等の必要経費だってある。パッキンの原価や時給換算のみをもってそれが暴利と決めつけるのは如何なものだろうか。悪徳業者は論外としても、そんな理不尽が水道工務店を追い詰め、不要不急の修理まで提案してその営業姿勢に疑念を持たれるという悪循環を生む。

    私が今回のコラムで申し上げたいことは「自分の頭で考えることの大切さ」である。例えばマンションの大規模修繕工事だが、3社以上の工務店から相見積りを取って一番安いという理由だけを以て委託先とする、といった安直な業者選定方法が正しいとは思えないのである。仮に中間価格帯の工務店を選んだとしても業界の裏側まで知る者としては合点がいかない。割高と言うよりも良心的な施工であることもあるし、割安でも杜撰な工事であったり、人員を削減するあまり工期が守れないのでは意味が無い。それに大規模な工事では工程や工法の妥当性の他、請負う工務店の倒産リスク(財務的ストレス耐性)まで勘案しなければならない。つまり、適正な請負契約を締結するには価格競争以外にも数多くの判断材料があり、最終的には信頼できる相手か否かによると思うのである。

    建築費や引越費用も道路付け(=大型車両進入の可否)、エレベーターの有無(=手運びか否か)、繁忙期か否かでも費用は大きく変わる。建築資材は殆どが輸入品なので工期によっては為替の影響も受ける。(最近の戸建建築の請負契約には急激な資材高騰時における工事費見直しの特約が付されることが珍しくない。)引越日は希望者の多い日曜祝日・大安吉日に限定すると割高になる。その様に容認すべき高値だってあるのだから他社と比較して格段に安く請負ってくれる委託先が見つかったならば無邪気に喜ぶよりも手抜き工事(作業)を疑った方が良い。手を抜かずとも屁理屈を並べて事後に追加料金を請求してくることもある。要するにその安値に合理的な根拠が無いのであれば何らかの落とし穴があると考えた方が良いということを申し上げている。参考までの記事だが合理的な建築費の削減のことならコラム№88(VE=Value Engineering)を今一度お読み頂きたい。根拠のある高値についてはコラム№135(アスベスト)が参考になると思う。

    ありふれたマニュアル本、商業主義的な比較サイト、真偽不明のインターネット書き込みといったものを妄信することなく、有名インフルエンサーの推奨は参考程度に留め、ステマ広告にも惑わされずに「自分の頭で考える」ことを心掛けようではないか。「心眼」を以て物事の「真贋」を見極めて欲しい。あらゆる疑問に対する答えをAI(=Artificial Intelligence、人工知能)に依存するようでは日本の将来が、いや、人類の未来が危うい。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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