思うところ218.「そもそも論Ⅱ」 | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ218.「そもそも論Ⅱ」




    <2026.5.1記>
    コラム№216(発想の転換)では建替協議のあり方、コラム№217(そもそも論)では構造設計のあり方、そのどちらの制度にも欠陥があると痛烈に批判した。それを「そもそも論」と称するならば本コラムはその続編とも言えよう。他にも問題提起しておきたいことがあるのだ。そもそも区分所有登記を認めてはならなかった分譲マンションが存在する。

    まず、区分所有法における区分登記の要件を今一度確認しておこう。その客観的要件は二つ。一つは「構造上の独立性」、もう一つは「利用上の独立性」である。構造上の独立性とは、「壁・床・天井等で他の部分と明確に区分されている状態」を指す。利用上の独立性とは、「その区分建物が独立して利用できる状態」を指す。その要件を2つとも満たさなければ建物を区分登記することはできない。以上のことを念頭に置いて私が目撃した驚愕の戸境壁の実態について知っておいて貰いたい。

    ある日の出来事だった。スケルトンリフォーム工事(給排水管を含む全内装を一旦解体撤去して行なうフルリフォーム工事)を任せていた大工から緊急連絡が入った。彼が元々口下手なせいもあるが動揺していた為か報告内容は支離滅裂で「壁を壊したら壁が無い!」とのことだった。有るけど無い?慌てていたにせよ、そんな意味不明の説明は私には通じても他社では通用しないだろう。すぐさま現場に駆付けて確認すると石膏ボード(厚さ約12.5㎝)の開口部から見えるのは確かに隣戸の石膏ボードの背面だけだった。私が彼の立場なら「戸境壁の石膏ボードを貼替えるべく斫ってみたところ、下地は必要最低限の桟木(さんぎ)のみ、内部は全くの空洞です。」と報告しただろう。そのうえでどう是正すべきかを相談したと思う。その住戸の戸境壁が構造壁ではないことは着工前から知っていた。また、そのマンションは音が漏れやすいとの噂も耳にしていた。だが、投資用のマンションならではの安普請、或いは壁の薄さのせいだとばかり思っていた。まさか戸境壁の中が空洞とは・・・。

    その住戸の再販を控えていたこともあり、私は当然の責務(重要事項調査)として明確な回答が得られないであろうことを承知のうえで所轄の法務局に問合せをしてみた。「石膏ボードのみで中が空洞の簡易的な戸境壁の住戸を区分登記して良いものか?」と質問したところ、法務局の窓口担当者は言葉を濁すばかりで「登記官がそれを知っていたらどう判断したか、ですね。壁を壊して確認するわけではないので・・・。」とのことだった。予想通りの役人答弁は立場上致し方ないことだ。だが、主に賃貸用・セカンドハウスとして販売されるが故に必要最低限の仕様としがちな投資用マンションであったとしても分譲目的に区分登記する限りにおいてはブロック塀くらい(又はその代替品)は戸境に積んで仕上げるのが当り前ではないだろうか。それは防火・遮音・断熱の観点からしても当然のことだと思う。重量級の空手家なら正拳突きの一撃で突き破れるような簡易的な戸境壁では部屋内の間仕切壁と何ら変わらない。

    されど区分所有建物の戸境壁は管理規約上勝手に変更できない。それに隣戸の石膏ボードまで斫ろうものならコントのオチみたいに部屋が繋がってしまう。よって、隣戸の石膏ボードは損傷することの無いよう細心の注意を払ってそのままに、該当住戸の石膏ボードは予定通り斫った後、戸境壁の中に耐火性にも優れた遮音材(兼断熱材)としてグラスウール(ガラス繊維)のマットを充分に詰めて仕上げるよう現場に指示した。また、買主にはありのままを説明して売却活動した。それが売主として当社にできる精一杯の是正措置であり誠意であった。

    この戸境壁が空洞だった事案は「手抜き工事」なのか、「行過ぎたVE案(VE=Value Engineering≒コスト削減の代替案)」なのか私が断定する立場に無い。思えばそのマンションが販売された時期は昭和40年代オイルショック(1973年10月~第四次中東戦争を機に第1次オイルショック、1979年1月~イラン革命を機に第2次オイルショック)の影響で
    悪性のインフレ(スタグフレーション)の渦中にあった。多くのゼネコンやマンションディベロッパーが建築資材の急激な高騰に喘いで倒産の危機に瀕していた頃だ。将来塩害による劣化現象を引き起こすことが分かっていながらコンクリートの材料に海砂を使うまで追い詰められていた大手工務店もあったと聞く。だからと言ってこの重要事項が説明されずに販売されていたとしたら道義的にも許されるものではない。

    はたと気付けば中東情勢(米国・イランの対立)に端を発する昨今の建築資材の急激な高騰は当時と酷似している。様々な意味で同じ過ちを犯してはならない。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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