思うところ223.「損得誤認」 | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ223.「損得誤認」






    <2026.7.14記>
    貴方が想定外の事件・事故に遭ったものの、損害が保険金で補償されたらどう思う?「あぁ、保険に加入しておいて良かったぁ。」そんな風に心情を吐露するのが一般的ではないだろうか。窮地が保険で救われた時の安堵する気持ちはとても良く理解できる。だが、本来は保険が適用されるような事件・事故は起きないに越したことはない。だから、「問題なんか何も発生しやしない。今までの保険料支払いは全くの無駄だったな。」と少し不満を覚えるくらいの方が実は幸せなのである。

    我々が請負う賃貸管理業務も何処か保険の仕組みに似た面があるように思う。賃貸管理会社たる当社が事件・事故の解決に奔走して貸主(依頼主)から感謝される時、それは貸主にとっては決して好ましい状況とは言えない。我々が難儀すればする程に事態は深刻な状況であることを意味するのだから「任せておいて良かったぁ!」と喜ぶべき場面ではないのである。むしろ、「賃貸管理会社って本当に必要なの?」と疑問を感じるくらいに平穏無事な方が貸主にとっては望ましい状況にある。「いざ、鎌倉(コラム№23参照)」の気持ちはとても大切なことだが、我々は小賢しくスタンドプレーでその存在価値を主張する必要など毛頭無く、本当に必要とされるのは誰からも気付かれないような日頃の心配り、言うなればファインプレー(コラム№2参照)によってトラブルを未然に防ぐことであることをご理解頂けると幸いである。

    さて、損得勘定を今回のテーマとするならば、当社の過去16年間を顧みる限り中古マンションの再生再販にせよ、新築戸建や宅地の分譲にせよ、結果としては随分安売りを繰り返してしまったことにも触れておきたい。実を言うとそれに関して私は惜しいことをした(損をした)などという気持ちは微塵も抱いていない。なぜなら、そのお蔭で当社は沢山のお客様に巡り合い、より多くの仕事を為すことができたからである。勿論、お客様は資産価値が向上(値上がり)して喜んでくれている。派生する案件や請負業務も増えた。お客様の利益は当社の利益にも繋がるものだ。もし、収益物件を全て販売せずに値上りを期待して頑なに保有を続けていたなら、インフレ傾向顕著な近年の不動産市況下にあっては含み益が飛躍的に増大していたことになる。だが、それでは投資、いや投機的な取引をしたに過ぎず、不動産事業としての意義・発展性に欠ける。

    最近では売却物件を募集する広告(業界では「物上げ広告」と言う。)に「今のうちに!」みたいなキャッチコピーを度々見掛ける。とても下品な広告表現に思えてならない。言葉の裏側に「(高値圏にある今のうちに)売り抜けましょう!」との思惑が透けて見えてしまうのだ。だが、不動産価格は需要と供給によって形成される。仲介会社の思惑で操作できるものではない。コラム№221(物元主義)でも述べたが「売主の味方」は良いけれど「買主の敵」であってはならない。「今が売り時!」と叫ぶ同じ人間が、その一方で同じ物件を「今が買い時!」と買い煽る営業姿勢は明らかに矛盾している。少なくとも売主・買主の双方がWin-Win(相思相愛)、願わくは三方良しになる、心からそう信じて仲立ちするのが筋というものである。

    ある日、ある大手不動産会社の「鉄は熱いうちに、」と題するインターネット広告を目にした。そんな広告が配信されてくるのはアルゴリズムが私を「不動産に興味がある人」と見做しているからだろう。あるいはリターゲティング広告の類いだったのかもしれない。何にせよその物上げ広告の「今が売り時」とする表現に少しばかり憤りを覚えたのである。売買の決断は自己責任だったとしても熱い鉄を手に入れたその人が火傷(損)しても良いと思ってそう謳うのか?違うと言うのなら鉄が冷めて柔軟性を失った(流動性が著しく低下した)時にその人はどう打ち直せば(立て直せば)良いと考えているのだろう。その不動産会社には友人がいる。義憤に駆られて少し焼き(喝)を入れてやろうと思い立ち、ん、これは失敬、その問題箇所を転送して「媒介欲しさに卑しい表現は慎むべし!」とご忠告申し上げようと思った途端、そのバナー広告は表示されなくなってしまった。肩透かしを食ってしまったものの、お蔭で勇み足にはならずに済んだと前向きに考えることにした。友人には独善的悪態をつかずにその会社に自浄作用があるものと信じて口を噤もう。不動産取引は時に得も損も、時に運も不運もあるだろう。だが、言わずもがな過ぎたる成果主義に陥ってはならない。言わずもがな恥ずべき仕事をしてはならない。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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