思うところ211.「掘り出し物こそご用心」 | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ211.「掘り出し物こそご用心」




    <2026.1.15記>
    何としても掘り出し物を手に入れたい!そう考えるのは当たり前と言えば当たり前の願望。社会的動物である人間が他人と相対比較してより良いものを手に入れたいと願うのは偽らざる本音、いや、本能と言うべきだろう。因みに不動産取引におけるその多くが割安感(お得感)を求めるもの。そうでなければ得難い好立地が絶対条件であったり、時としては単なる無いものねだりの類いであったりする。

    当社としてはあまりにもMission Impossible(無理難題)のご用命であると判断した場合は心苦しくも丁重にお断りすることもある。我々の仕事柄、安請け合いは禁物であると考えているからだ。その場凌ぎの色よい返事をしたことで過度な期待をさせてしまえばその反動で信用を失いかねないのである。(駅に)近く・(but)静かで・新しく・広く・明るく・・・そして何よりも極めて安いこと。牛丼や立喰い蕎麦ならば旨い、安い、早いお店は沢山あると思うが不動産の場合はそうもいかない。ご自身の希望条件にしっかりと優先順位を付けて段階的に物件を絞り込んでいくこと(=絞り込み検索)をお勧めする。非現実的な物件の獲得を夢見るよりも自分のニーズに見合うものかどうかを大切にした方が良いと思う。

    以上の考え方を踏まえて掘り出し物こそ警戒心をもってご検討頂きたい。私がそう助言すると大抵のお客様は怪訝な顔をする。「何で?」と思うのは致し方が無いが冷静に考えて欲しい。もし、駅近でありながら閑静な住環境の好立地、しかも最新の設備・仕様を兼ね備えた陽当り・眺望が良好な新築同然の家、それが格安の賃料設定や売出価格ならばあまりにも不自然ではないだろうか。掘り出し物と喜ぶ前に「何故?」と疑問に思う方が健全な思考だと思うのである。格安の理由が事故物件(事件や自殺があった部屋)ならばそれも腑に落ちる。(心理的瑕疵が気にならない人には超優良物件!)好立地でも堅固な建物が建てられない計画道路内の土地、美築ながら越境問題を抱える戸建高収益物件でも容積率超過で融資利用が難しい違反建築物、老朽化や耐震力不足で建替えが前提となるビル等々、そういった明確な理由があるならさもありなん。そう、理由も無く極端に安いものなど無いと考えるべきなのである。

    確かに相場に無頓着であったり、又は入居者に気兼ねして周辺相場に上昇傾向があっても賃料の見直しを行わない大家さんもいる。だが、それはいずれ修正されると考えた方が良い。現に賃料が割安のまま放置されていたり、建物管理の怠慢が原因で過小評価されていたりするビルの買収を目論む不動産会社は多い。(当社にもそのビジネスモデルはある。)改良工事創意工夫(例えば、デザイナーの監修による共用部の仕様変更、オフィス家具付とした募集方法による差別化、屋上の有効活用等)により問題点を払拭した後、賃料改定を成し遂げることで資産価値を向上させてから投資家に転売するビジネスモデルだ。それは何ら商道徳に反するものではない。株価がPBR(株価純資産倍率)1倍(=解散価値)以下で長らく放置された伸びしろの大きい会社程にM&A(会社買収)の対象にされ易いのと似ている。冷徹な資本の論理であることは否めないが友好的なM&Aであれば買収する側とされる側にWin-Winの関係を築くこともできる。不動産売買の場合も売主・買主双方に利益があってテナントの既得権となっていた割安が修正(賃料是正)されるだけのことなのである。

    以下のことにも留意して欲しい。今までの定期借契約は建物の老朽化の懸念から立退き問題を回避することに重きを置いていた。ところが最近では賃料相場の上振れを予想する貸主が多く、定期借家契約という契約形態はインフレ対策が真の目的と成りつつある。勿論、定期借家再契約はあくまでも新規契約であるのだから新たな賃貸条件を応諾するかしないかは借主の自由である。だが、再契約の条件とする新賃料に借主が応じなければ契約を終了させてしまおうとする貸主の思惑があるわけだ。だから、その手の割安賃料が前提の住まい探しは期間満了を以ての引越し、それに伴う金銭的負担を覚悟せねばならないし、掘り出し物と飛びついた事務所もその格安賃料が前提の経営に甘んじていると貸主変更(売却・相続等)で大きな変化があった時は対応しきれずに自らを危うくするのだ。

    人の欲は尽きない。絶対比較をすれば現代の人間の生活は随分豊かになった。原始時代と比べるならば蛇口を捻れば飲用水が出る便利な生活ができるだけでも幸せなはずである。それなのに誰もがそうであると豊かさを実感できない。今度はより美味しい良質な水を手に入れようとする。良質な水が皆に行き渡ると今度は遠隔地から入手困難な名水をお取り寄せしたりするようになる。要するに相対比較して他人よりも良いものを手に入れなければ満足できない生き物なのだ。誰もが容易に名水が手に入る世の中になったら一体どんな水を欲するのだろう。そのような性(さが)が掘り出し物を追い求める気持ちに繋がっているのかもしれない。コラム№14(欲)で申し上げた通りで人間の欲望が経済活動の原動力になっていることは間違いないところだと思う。しかしながら、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の金言だけは肝に銘じておきたい。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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