
<2026.2.2記>
あの真の目的は一体何だったのだろうか・・・。昨年(令和7年)当社が保有するアパート敷地内で発生した粗大ゴミの放置事件についてあれこれ考えてみた。それはあくまでも粗大ゴミが放置されたに過ぎない些細な事件であり、不法投棄とは少し異なる奇妙な出来事だった。なぜならば、その粗大ゴミ(故障した空気清浄機)は長らく放置されてはいたものの、「無料回収シール」なるものが貼付されていたのである。だから事件当初に限って言えば粗大ゴミを出した人に悪気は微塵も無かったと思う。そのシールのデザインは行政が販売している事業系のゴミ有料回収シールに酷似しており、不用となった家電製品にそれを貼って自宅前に置いておけば後日その業者が無料で回収する旨が書かれていた。
だから当社は然程気にもせずその状態を静観していたのである。ところが1ヵ月以上経ってもそのゴミは回収されない。コラム№75(ゴミ置場)で紹介した「割れ(破れ)窓の理論」によればゴミの放置はモラルの低下と環境悪化の連鎖を生む。家主として容認できない事態だったのだがそれを一旦撤収すべきであることを申し入れたくとも誰がそれを出したのか不明である。それにアパートの住人が出した物と決めつける訳にもいかない。もしかしたら他所の住人の悪事かもしれないからだ。(事実、近隣住民が当社のゴミ回収BOXを平然と無断利用しているとの苦情が何度か寄せられていた。)仕方が無いので私自ら無料回収シールを配布した業者に電話を掛けてみることにした。無責任極まりない所業に憤りを感じ始めていたので少し説教してやろうと思った次第である。
いざ勢い勇んで電話を掛けてみると既にその番号は使われておらず肩透かしを食った。(無効となったプリペイド携帯?元々偽の電話番号?)そもそも会社名も住所の記載も無い「不用品回収センター」なる正体不明の事業者である。だから追跡調査などしようがないし、それまでの経緯からしてそのゴミを出した本人に引き取りを求める貼紙をしたところで無視を続けるに違いない。やむなくそのゴミは当社負担で回収・廃棄処分したうえでアパートの掲示板に貼紙をし、その様な怪しげな粗大ゴミの無料回収サービスを今後は利用しないよう注意喚起しておいた。
これは新手の金属回収システムの失敗プロジェクトだったのか?確かに為替の影響で資材は驚く程に高騰している。近年は電線や銅板は疎か、銅像や公共施設の水栓金具に至るまで金属の盗難事件が頻発するあり様である。そんなご時世だから効率良く電化製品を集めて銅やアルミニウム等を取り出せば採算が合うと考えられなくもない。
因みに私が子供の頃(昭和40年代)は大正生まれの祖父・祖母が「ぼっこ屋さん(ぼっこ=二世代前の局地的方言でぼろ屑のこと)」と呼ぶゴミ回収業者、あるいは金属専門の「鉄屑屋」と呼ぶ産業廃棄物処理業者が「不用品はないか?」と時折我が家を訪ねてきた。特に祖父が盆栽の手入れをした後に使いみちが無くなる銅線の端材が欲しかったらしい。私がそれら細切れを拾って小箱に集めておくと駄賃をくれることもあった。(祖父は盆栽愛好家の集会に講師として招かれる程の名人、近隣住民から事ある毎に代筆を頼まれる程の書道の達人)また、戦前生まれ(昭和10年代)の父が「ちりこ(ちり紙交換屋の略、「ちり紙」とはトイレットペーパーのこと。汲み取り式トイレの時代は紙の形状も今と異なり平判で「落とし紙」とも称していた。)と呼ぶ業者がトラックの屋根に括り付けたスピーカーから古新聞・古雑誌の引き取りを大音量で呼び掛けながら定期的に街を回遊していた。(今は見かけなくなった昔ながらの「焼き芋屋さん」みたいな感じ。)そして相応のトイレットペーパーと交換してくれるのである。明らかに職業差別的蔑称であったと思われるそれら業者の呼称は今では死語となっている。(当時の不動産業者に対する蔑称は「千三つ屋」とか「周旋屋」だった。)
今回の事案はゴミ無料回収シールが貼られたことで占有離脱物横領罪(刑法第254条)に問われる心配は無いだろう。それでも今一つ解せないビジネスモデルだ。ならば利益になる物は堂々と持ち去り、利益が見込めない物は無関係を装って逃げ切ろうとした不届き者の仕業か?いや、もしかしたらゴミ無料回収シールは不用品買取りビジネスのインセンティブだったかもしれない。不動産業界でも読んで貰いたい(捨てないで欲しい)DMやチラシにノベルティを付すことは良くある。嘗て「押し売り」という強引な訪問販売があったが近年は高齢者を狙った真逆の「押し買い」が多発しているらしい。そのきっかけを作る為のツールだったのだろうか・・・。何せ架空のサービスなら経費は掛からない。話だけでも聞いてみようと問い合わせをして悪徳業者に自宅訪問の機会を与えてしまうと貴金属・宝飾品を売ってくれるまで帰らないという。勿論、「高値買取り!」は宣伝文句に過ぎず、めぼしい物のみを買い叩いた後に値の付かない不用品は廃棄処分の高額負担の要求をするという。若しくは貴金属・宝飾品の安値買取り以外にはそもそも関心が無いから「こちらの不用品についてはこの無料シールを贈呈しますね。これを貼っておけば後日回収しておきますから」とでも煙に巻いて逃げるための小道具だったのだろうか。
かく言う不動産業界にも悪質な「押し買い」が蔓延る。狙われるのは判断能力が衰えていながら身の回りに頼れる相談者がいない独り暮らしの高齢者だ。そんな人が「無料査定」や「高値買取り」の文字が躍るチラシに惹かれて自宅訪問を受け入れてしまうと買取価格(転売可能な仕入値)で売ってくれるまで長時間居座るのが常套手段。住替え先の確保が難しい人にはリースバック契約を提案して「今家を売れば大金が手に入ります。そのお金で家賃を払えばそのまま住むことだってできるんです。」などと甘言を弄する。その様な悪徳業者は「長生きリスク」や「インフレリスク」等、商談に不都合なことについては一切触れようともしない。
心眼を以て目を凝らせば世の中には沢山の無償の愛と善意を見つけることができるだろう。それは奉仕の心意気であったり、深い家族愛や友情であったり、細やかな親切だったり様々である。しかしながら、訝しげな「無料!」を謳う広告物が至る処に氾濫する悍ましい現実もある。虚しいかな、哀しいかな、「魅惑の甘い言葉にこそ落とし穴があると疑うも処世術のうち」とご忠告申し上げておく。

このコラム欄の筆者
齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)
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