思うところ213.「豆知識を以て戯れる」 | 茅場町・八丁堀の賃貸事務所・賃貸オフィスのことならオフィスランディック株式会社

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  • 思うところ213.「豆知識を以て戯れる」




    <2026.2.14記>
    不動産のバブル期入社世代が還暦を迎えて「あんこ商売(コラム№3参照)」なんぞ今や死語。されど今も昔も建築用語で言うところの「ハト小屋」は愛玩動物としての鳩を飼うための小箱でないことに変わりはない。(コラム№45参照)不動産業や金融機関で「ブラック(コラム№119参照)」と言えばには非ず、信用情報機関に長期滞納履歴や破産等のネガティブ情報が記録されている人のこと。不動産業と自動車産業で使う「EV」それぞれの意味の違いは誰もが知るところで語るに及ばず。(コラム№121参照)不動産の仲介業務に従事する人が「ふうすい」と聞けば「風水」と解するだろうが建設業や建物管理に従事する人にとっては「封水」のことだったりする。(コラム№207№208参照)同じ不動産販売の社内にあっても新築部門で「ばいけい」と言えば十中八九「売買契約」の略で間違いないが、仲介部門では「売買契約」なのか「媒介契約」なのか文脈を以て判断せざるを得ない。新築部門でも仲介部門でも「じゅうせつ」といえば「重説」であって正式名称は重要事項説明書。ところが耳を澄ませば建築・設計部門の現場では「住宅設備」のことを「じゅうせつ」と略して打合せする人の声も聞こえる。ある大手不動産仲介会社(S社)ではお客様宅を訪ねることを「タクホウ(宅訪=自宅訪問)」と言っていたがある大手マンションディベロッパー(D社)ではそれでは意味が通じず、「チョクホウ(直訪=直接訪問)」と言っていた。これら用語・略語・隠語の豆知識は知っていても然程の得は無いが知っておいても特段損は無い。

    最近は中国人富裕層との取引が多いから漢字の使い方にも注意せねばならない。例えば日本語の手紙はLetterだが中国語における手紙はToilet Paperである。中国人のお客様に「手紙を下さい!」とお願いしたら「下痢か?ティッシュでも良いか?」と返答されかねない。日本人が言う酒店は酒屋のことであり、飯店は中華飯店のことだが中国語ではどちらもホテルを意味する。かく言う中国人同士も国土が広過ぎて互いの地域の言葉では意味が通じないこともあるらしい。黒竜江省出身者を売主、上海出身者を買主とする不動産取引をした際、売買契約手続き完了後に両者は談笑していたが中国語が全く理解できない私は蚊帳の外だった。ところが、帰り際になって黒竜江省出身の売主が「相手が上海語で話すから半分位しか理解できなかったよ。」と私にそっと耳打ちしてきたことがある。流石に「半分位しか」は私を慮っての言い回しだった気がするが静岡県で生まれ育った私が生粋の青森県人の訛りを聞き取れないのに近いのかもしれない。

    トイレの呼称は古今東西に多種多様な表現があって興味深い。トイレ(便所)の語源は「Toilet」だが米国では便器そのもののこと。「Washroom」は日本語の「お手洗い」や「手水場(ちょうずば)」に馴染む呼称であるが「Bathroom」だと日本では浴室をイメージしてしまう。風呂・トイレ一体式が当り前の欧米、風呂に浴槽があってトイレは別が当り前の日本、それぞれの生活習慣の違いが呼称に表れている。「Lavatory」は「公衆トイレ」と言ったところだ。私が子供の頃(昭和40年代)、公園内の汲み取り式の公衆便所の扉に「WC」と表示されているのを見掛けたが「WC」は「Water Closet」の略、つまり水洗式トイレだから今思えば明らかに誤記であったと思う。私は販売図面や募集図面の中で洗面台併設の共用トイレの表示については「Rest room」を好んで使う。「化粧室」や「Powder room」の呼称も悪くないが女性専用のイメージを纏ってしまうからだ。何となくRest(休憩)の響きが上品に感じられるのは私だけだろうか。日本語ではその他に「厠(かわや)」「雪隠(せっちん)」「西浄(せいちん)」「東司(とうす)」「閑所(かんじょ)」等々枚挙に暇無い。呼称のバリエーションのあまりの多さに先人らも「御不浄」なるものに「憚り」を感じていたことを匂わせる。もっとも我々の悩みは「トイレの呼称」ではなく、「トイレの故障」の方であって特にその臭いであるのだが。


    ご存じだろうか。日本や米国で言うところの1階は欧州では0階、又はGround Floorとして数える。だから日米で言う2階が1階に相当する。そういうことも含めて我々不動産業界の人間は広告上の建物1階を真の1階と決めつけてはならない。傾斜地に建つマンションは住民票上は1階であっても建築確認申請上や登記簿上は地階だったりする。事実、私が会社員時代に販売を担当した港区高輪台のマンションの1階住戸はどの部屋も他のマンションなら2階に匹敵する程見晴らしの良い住戸だったのに住民票上の記載は1階、登記簿上の記載は地階だった。「地下扱い?登記官は実態に即してもう少し柔軟に差配すべきじゃないかなぁ」と購入者の心中を察して残念に思った記憶がある。

    マンション分譲の黎明期におけるパンフレットを見ると建物表記に間違いが散見される。例えば、ベランダとバルコニーを混同しているケースは珍しくない。その決定的な違いは屋根の有無である。ベランダには屋根があるがバルコニーには屋根は無いということ。皆が屋根(庇)と勘違いしているのは上階のバルコニーの下部に過ぎない。また、ベランダ表示に階数の制限は無いがバルコニーは2階以上である。但し、それらはあくまでも国内の定義であって日本で言うところのベランダは海外ではバルコニーと認識されていたりするからその点はご留意の程。ついでにテラスの定義にも触れておこう。テラスは「地面と直に接続する屋根の無い屋外空間」と覚えておかれると良い。
     
    これは笑い話、と謂えども実話である。誰に対しても臆さず物申す営業姿勢は今も昔も変わらないが私が血気盛んな若かりし頃のことである。当時の決済は今と違って現金や預金小切手を用いることも多かった。ある取引の決済準備で客付業者(=買主側の仲介会社)の立場であった私は買主から決済の金種を預手(=預金小切手)でも良いか打診された。その旨を物元業者(=売主側仲介会社)に伝えたところ、少々柄の悪いその担当者は、「あーダメダメ!うちは預手では(決済を)やってないんだわぁ」私はそれまでの彼の横柄かつ無礼な態度に対する嫌悪感の蓄積もあって間髪入れず物申した。「まず、決済の金種は貴方(仲介人)が判断することではない。それに契約条項に『支払い方法は現金、又は銀行振出小切手を以て』と明記されているではないか!」と一喝した。すると相手は若造の発した直球ど真ん中の正論に動揺を隠せず、「あっ、えっ、んー、預金小切手は駄目だけど銀行振出小切手なら、いっ、いいっすよ。」と耳を疑う驚愕の回答。要するに彼は自称ベテラン、肩書きは名ばかりの厚顔無恥、いや、単なる無知の馬鹿者だったのである。当然のことながら預金小切手と銀行小切手は別称であっても同一のものであるし、振出した銀行が潰れない限りにおいて安全性は現金と変わらない。彼のような言葉遣いの人を私は蔑称にて「輩(やから)」と呼んでいる。

    その様に昔の不動産業界も輩が多くて褒められたものではないが、現在の不動産業界はホワイト企業であろうとするあまりにホスピタリティを軽んじた過度な分業働き方改革?)によって営業マンが経験不足に陥っており、仕事の質もモチベーションも極度に低下しているように思う。私は声を大にして言いたい、「日本の不動産業界はやばい!」と。因みに約半世紀の時を経て「やばい!」は「So bad!」のみならず、真逆の「So Good!」としても使われるようになってしまった。無論、此処で私が言う「やばい」は本来の「やばい」、つまり前者の「やばい」の方である。


このコラム欄の筆者

齋藤 裕 (昭和39年9月生まれ 静岡県出身)

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